「いまの子どもたちは、全員がコンピュータを習って学校を卒業する」という雑誌の記事を読み、小学校から高校までに行われている情報教育の内容を調べてみた。小学校から高校までの各学校段階で学習する内容は、文部科学省が公示する学習指導要領に示されているが、現行の学習指導要領では、- 小・中・高等学校を通じて、各教科や総合的な学習の時間において、コンピュータやネットワークの積極的な活用を図ること
- 中学校・高等学校において、情報に関する教科・内容を必修とすること
とされている。詳しく調べると、インターネットの調べ学習から、電子メールや電子掲示板の利用、ワープロソフトやプレゼンテーションソフトの活用、表計算ソフトやデータベースソフトの学習などまで、非常に幅広く行われている。しかし、アルゴリズムを学習するために、プログラミング言語を扱っている例は少なかった。
そんなときに知ったのが「Squeak(スクイーク)」だった。「Squeak」は、WindowsやMacintoshの手本となるパソコンの概念を1960年代に提唱し、“パソコンの父”と呼ばれるアラン・ケイ博士が開発したフリーソフトだ。さらに調べてみると、「Squeak」を使った情報教育が京都市や東京の学校ではじまっており、海外では米国、ドイツ、インドなどで実践されていることがわかった。
「Squeak」には、絵を描いたり、文章を書いたり、ネットワークを通して作品を紹介したりなど、さまざまな機能がある。WindowsやMacintosh、Linuxなど、多くのプラットホーム上で動作する。斬新なソフトゆえ、いままでの感覚で操作してもうまく動作しない。そこで、以下に簡単な操作手順を示した。興味を持たれたら、早速ダウンロードして試用してほしい。
中心となるのは「タイルプログラミング」だ。タイルプログラミングとは、「SqueakToys(スクイークトイ)」と呼ばれるコマンドのタイルを組み合わせて、プログラミングを行うこと。座標や乱数といった数学的な考え方や論理思考が自然に身につくように設計されている。
「Squeak」を起動すると、左下に「ナビゲータ」、右下に「部品」と表示されたシンプルな画面が表示される。この画面が「デスクトップ」で、ここで「作品」を作成していく。ナビゲータをクリックすると、「フラップ」と呼ばれる領域にコマンドボタンが表示され、部品のクリックで、SqueakToysで使用する部品オブジェクトを選択できる。部品オブジェクトは、制御ボタン「ハロ」を使って大きさを変えたり、回転させたり、他のオブジェクトと組み合わせたりできる。
ナビゲータフラップの中から「新しく作る」ボタンをクリックすると、「作品」ウィンドウが作成される。これは自分専用のデスクトップのことで、デスクトップとは別に、いくつでも作成できる。作品ウィンドウの中をクリックすると、ウィンドウの中にジャンプできる。
ナビゲータフラップの「ペイントツール」を利用すると、絵を描ける。パレットからブラシを選択し、ブラシの太さと色を決めて好きな絵を描けばよい。完成したら「ほぞん」をクリックする。ドラッグ操作でデスクトップ上の好きなところに移動できるほか、絵を【Alt】+クリックすることで修正が行える。
次に、部品フラップの中にあるオブジェクトを利用した、基礎的なタイルプログラミングの例を紹介する。
- 部品フラップを表示して、「多角形」をドラッグ&ドロップする
- 多角形の上で【Alt】+クリックして、ハロを表示する
- 左辺中間にある目の形をした「自分のビューワを開く」をクリックして、「ビューワ」を表示する
ビューワは、オブジェクトの情報を表示したり、設定を変えたり、SqueakToysで利用するタイルを置いたりする場所のこと。ビューワの中には命令タイルがたくさん用意されている。- 好きなタイルをドラッグ&ドロップして、「スクリプタ」ウィンドウを表示する
- 実行順に命令タイルをスクリプタにドラッグ&ドロップしていく
これだけの操作で、プログラムが完成してします(簡単!)。「Squeak」を使ってみて、10年くらい前(?)に「キッドピクス」を使ったときの感動を思い出した。「キッドピクス」も「Squeak」同様、Macintosh版が開発されてWindowsなどに移植されたが、斬新な機能、ソフトウェア設計上の思想に驚嘆したものだ。「Squeak」も、久しぶりの感動を与えてくれた。「Squeak」の動向は、これからの情報教育の方向性を考える上でも大いに参考になる。来年も引き続き注目していきたい。