「ZombieVital」のユニークな点は二つある。ひとつは、通常のゲームとは正反対に、プレイヤー自身が「悪」の存在となり、「冒険者たちの血肉を求める、冷酷な経営者として行動する」というアイデア。そしてもうひとつは、いまどきのゲームにしてはめずらしく、一切の映像や画像を廃して、文字と数字、記号だけですべてを表現している点だ。

しかし、これが予想に反して実におもしろい。下手にCGなどが挿入されない分、かえって想像力がかき立てられ、やり込んでいくうちにどんどんとイメージが膨らむ。映像の表示に場所や時間が取られないので、ゲームの進行はスムーズだし、画面に表示される情報もコンパクトにまとまっている。慣れるととてもわかりやすく、操作性も非常によい。

ゲームの内容はタイトルにもある通り、迷宮を経営する、一種の「経営シミュレーションゲーム」だ。この迷宮は、殺した冒険者たちの装備や血肉を資源として用いることで成り立っている。つまり、プレイヤーがまずなすべきは「なるべく多くの冒険者をおびき寄せるために工夫を凝らすこと」だ。冒険者たちが求めるものは、一にも二にも手応えのある充実したハードな冒険そのものなのだ。

そのため、プレイヤーは手持ちの資源の許す限り、ダンジョンを深く掘り下げ、そこにトラップを仕掛けて、なるべく強力なモンスターを配置しなくてはならない。やって来た冒険者が、迷宮の中での冒険やモンスターとの戦闘に満足すればするほど、その冒険者を倒したときに得られる資源が多くなる。また、迷宮から無事生還した冒険者の満足度が高いほど迷宮の評判が高まり、やって来る冒険者の数も増え、そのレベルも高くなる。

しかも、やって来る冒険者のレベルが高いほど、他の冒険者をおびき寄せるのに効果のある「レアアイテム」を装備している可能性が高い。もし、こうした冒険者がやってきたら丁重にお迎えして、なるべく迷宮の深い階層までおびき寄せ、確実に倒してレアアイテムを獲得したい。

とはいうものの、「ZombieVital」では、プレイヤーは冒険者たちに対して直接働きかけることは一切できない。できることは、階層を掘り下げ、モンスターやゾンビ、トラップ、アイテムなどを効果的に配置しながら、次々とエリアを完成させて迷宮を充実させること。そして、冒険者の「帰還魔法」を妨害することくらいである。しかし、ゲームが進むにつれて、訪れる冒険者の数やレベルがアップすると、傷ついたり倒されたりするモンスターの数も増え、それに対する対処やさらなるダンジョンの強化など、やるべき作業がどんどんと増える。うかうかしていると、せっかくレベルアップしたモンスターたちを片っ端から殺され、レアアイテムを根こそぎ奪われてしまいかねない。