これでもかとばかりに魚の群れが泳ぎまわる3Dスクリーンセーバ。海中の遺跡を舞台にタイ、イワシ、アジ、ブリが何百匹と群れをなして回遊する様は、壮観としか言いようがない。口やひれを動かして泳ぎ回る魚たち、移りゆく海面の波模様や降り注ぐ太陽の光を見ていると、本当に自分が海に潜っているような錯覚を覚えてしまう。舞台となる遺跡は「2039年 旧東京市」。海面水位が上昇して、ビルの20階から下は水没しているという設定だ。林立する高層ビルを住み処とした魚の群れが優雅に泳ぐという非日常的な情景も、画面の美しさも手伝って、自然と受け入れてしまう。舞台はこのほかに「与那国島海中神殿」があり、こちらは南国の海を純粋に楽しむことができる。
魚の群れは最大8群を同時に表示でき、それぞれ魚の種類や数、個々の大きさや密集度といった詳細な設定を行える。明るさや水の濃さ、海面や泡、陽光といった効果のON/OFFも可能。さらに、魚の総数自体を0.25倍から8倍まで6段階に調整することができ、最大ではゆうに1万匹を超える。ここまでくると「群れ」ではなく、一つの生き物にも見えてしまうのが不思議だ。
多数の魚や効果を表示するためには、それなりにCPUやグラフィックカードのパワーが要求される。DirectXは9.0以降が必須。Pixel ShaderやHardware T&Lが搭載されていれば、自動的に検出して利用する。ハイスペックなパソコンを持っている場合、どこまで多くの魚をなめらかに動かせるか挑戦してみるのもおもしろいと思う。魚の総数を減らしたり効果を抑えたりすることで、ノートパソコンやスリムタイプパソコンなどでも鑑賞できるのはうれしい配慮だ。
動作中に、キーボード操作で時間の進み具合(動きの速さ)を調整できる。マウスで視点を変更して鑑賞するモードでは、群れはもちろん、水没した高層ビルをさまざまな角度から眺めても楽しい。フレームレートや魚の数など、動作状況を画面上に表示することもできる。設定ダイアログがすべて英語表記となっているため、ややわかりづらいように思えたが、ドキュメントには説明が日本語で詳しく書いてあるので、まずはいろいろと設定を変えてみるのがよいだろう。姉妹ソフトに「Fish Saver 1」「Fish Saver 3 REPA」があり、こちらはシェアウェアとなっている。
近い未来、本当に東京が水没してしまったとしたら大変なことなのだが、つい「本当に見てみたい」と思ってしまう、神秘的な作品だ。
(柴崎 ひろ)