まるで短編の環境ビデオ集を見ているような気分にさせてくれるスクリーンセーバ。「雅」は、“わびさびをテーマにした”と作者が語る通り、派手な演出を廃し、渋めだが美しい3D映像と、ゆったりと奏でられる音楽で構成されたスクリーンセーバだ。表示される映像は「金屏風の前を舞う扇子」「澄みきった小川」「夕日を背にした浮御堂」「石庭」などで、「某国営放送で流されるような、癒し系短編環境映像風の味わい」とでもいえば、少しはニュアンスがおわかりいただけるだろうか。各シーンともわずかにカメラ視点が動いたりはするものの、派手な動きは一切ない。静かにフェードインして、リアルな3D映像を映し出し、そしてフェードアウトしていく。
バックに流れるBGMもすばらしい。オルガン、ピアノ、ストリングス、ハープなどの音で奏でられるメロディはどれもやさしい。心を落ち着かせてくれ、渋めの映像にピタリとハマる。シーンに合わせて、鳥のさえずりや小川のせせらぎといった効果音も聞こえ、癒し度満点だ。
奇を衒ったところは何もないが、じっと見入らずには、そして聞き入らずにはいられない、鑑賞に堪え得る“大人の”スクリーンセーバだ。シェアウェア登録前の状態でも、画面中央に小さく「試用中」と表示されるだけで、すべてのシーンを見ることができるのはうれしい。
ひとつだけ、ちょっとしたお楽しみも用意されている。BMP/JPEG形式の画像を登録することで、その画像をシーンの一部にテクスチャとして貼り付けることができるのだ。わびさびを再現した映像の中に、南国の島で撮った記念写真が混ざっている、というようなことも、また楽しいものだろう。
とにかく完成度の高さには脱帽するしかない。スクリーンセーバが好きな人には、ぜひ一度は見てもらいたい秀作だ。
なお、ノートパソコンなど、マシン環境によっては動作しない場合がある。3Dの動作環境には注意しよう。
(練馬 ベク蔵)