「地形シミュレータ」を見た人のおそらく誰もが「美しい」と唸るのではないだろうか(と筆者は思う)。「フラクタルの偉大な父──Dr.Benoit B. Mandelbrotに捧ぐ」と書かれたタイトルを表示後、暗転したディスプレイ上に、映画館で緞帳が開くような感じで次第に美しい山岳風景が表示されていく。フラクタル曲面によって描かれた模擬地形がディスプレイ一杯に表示されると、今度は景色がゆっくりと回転をはじめる。あたかも、はるか上空に設けられた展望台に立ち、360°の大パノラマを楽しんでいるような気持ちに浸れる。あらかじめ用意された地形は、山岳風景の「標準」をはじめとした計8種類。鮮やかな赤が美しい「紅葉」、「標準」よりもやや緑が濃い「日本の夏山」、水平線で隔てられた青い海と空がどこまでも続く「アドリア海の島々」、わずかに岩肌を見せながらも一面に積もった白い雪が印象的な「ヒマラヤの夏」など、いずれもリアルな風景ばかりだ。
「一般」「地形」「光源と視点」ほか、計5項目が用意された設定ダイアログでは、非常に細かな設定を行うことが可能。「地形」では、表示される各地形の植生、地層、水の各色のほか、基準面、植生限界、雪線の各高度、さらには垂直拡大率といったパラメータが設定されている。既存データのパラメータを変更して、ユーザがオリジナルの地形を作成することもできる。そのほかにも1列256〜2,048の4段階から選択できる「ポリゴン数」、3段階が用意され、複数を組み合わせて、より強い効果を出せる「スムージング」といった設定項目もある。
「光源と視点」では、光源と空の色、方位角と仰角を設定できるほか、視点の高度および角度も設定可能。そのほかの項目では、霧、霞、波、雲をどの程度の濃度(量)で生成するかや、一定時間ごとに地形を作り直すかといったことを設定できる。スクリーンキャプチャをとって、クリップボードにコピーする機能や、「地形シミュレータ」起動中にマウスの移動を無視する機能もある。
ヘルプには各パラメータに関する説明だけでなく、「フラクタルの概念」「自己相似と次元」「統計的自己相似」といった項目もある。美しい風景を楽しんだあと、興味がある人は数学の勉強もできるというわけだ。
(練馬 ベク蔵)