「ATOK」は、Windowsに標準搭載されている「Microsoft IME」と同様の「日本語入力システム」。高い変換精度と充実した辞書が特徴だが、近年は単なる「かな漢字変換」の枠を大きく超えた機能を備えている。ここでは、日本語文書を書く上で最も基本的で、作業効率に決定的な影響を与える「日本語入力システム」の最先端を紹介しよう。
■語彙の豊富な辞書と高い変換精度
日本語入力システムの基本は何といっても「意図した文字列に正確に変換する」こと。定評のあるATOKの変換エンジン「ATOKハイブリッドコア」がより進化し、正確な文節区切りが可能になった。辞書の拡充も図られ、今回の「ATOK 2009」では、裁判員制度や保険といった話題の分野の用語をはじめ、人名、ブログ・ネットオークション用語、さらには「アラフォー」「婚活」といったトレンド用語も辞書に搭載された。こうした辞書の拡充によって、変換効率も向上した。
変換モードも「一般」モードのほかに「話し言葉」モード、「文語」モードを備え、それぞれに適した変換を行えるようになっている。このうち「話し言葉」モードは「関西」「北海道東北」など、全国を6分割した地域モードを持つ。また、今回のバージョンアップでは「文語」モードが強化され、歴史的仮名遣いで入力できるようになったほか、「文學」「藝術」といった、いわゆる康煕字典体の入力もしやすくなった。
■「かな漢字変換」を超えた、多彩な入力支援機能
「ATOK」が単なる「かな漢字変換ソフト」にとどまらないのは、その豊富な入力支援機能による。入力されたひらがなや英数字をそのまま「かな漢字」に置き換えるのではなく、そこからまったく別の言葉さえ持ってきてしまうのだ。
先頭の数文字を入力するだけで変換候補を予測してくれるのはもちろん、その言葉から連想される言葉を候補にする「連想変換」機能もある。目的の意味にぴったりの言葉が思い浮かばないときなど、適当な言葉を「ATOK」が教えてくれるというわけだ。例えば「美しい」で連想変換を行うと「可憐」「愛々しい」「愛しい」「懐かしい」などの候補が表示される。
連想変換をさらに推し進め、Webサイトや外部データベース、アプリケーションと連携を図れるようにしたのが「ATOKダイレクト」だ。入力語をキーワードに、関連語句をWebサイトなどから検索して変換候補とする。同時に、当該Webサイトにある解説も表示させることが可能だ。今回のバージョンアップでは、この「ATOKダイレクト」も強化され、解説部分にHTML表示ができるようになった。これにより画像の表示やリンク対応が可能になった。入力支援のみならず、情報収集ツールとして使うこともできる。
校正支援機能も充実しており、四文字熟語の誤り、カタカナ語や敬語の間違いも指摘してくれる。