数年前、パソコンで扱われる動画は、それ以前の標準解像度(SD映像)から、フルHD映像へと進化を遂げた。2015年現在で見れば、テレビ放送、市販のビデオソフト、ビデオカメラの録画などはフルHD映像が主流を占めている。ただし世の中は、フルHDよりもさらに上の高解像度「4K/8K」へと進化を遂げつつある。実際、テレビでは上位機種から4K対応がはじまっているし、テレビ番組も──まだまだ特定チャンネルのみではあるが──4K解像度での放送が開始されている。そしてなにより、iPhoneやAndroidスマートフォンの一部では4K解像度での動画撮影や、4K動画の表示が可能になってきている。特に販売数の多いiPhoneで4K動画が使われるようになれば、普及にも弾みがつくだろう。
「TMPGEnc MPEG Smart Renderer 5」は、4K解像度に対応するのはもちろん、4K放送で使われる標準コーデックとなるだろう「H.265/HEVC」に対応したのが最大の目玉だ。フルHDから4Kへと単に解像度を上げるだけでは、動画の圧縮率の問題からデータが大きくなりすぎてしまう。4K動画の編集機能を持つソフトがH.265/HEVCに対応するのはまさに必然。このあたりまえのことを、あたりまえに実現してきたのが「TMPGEnc MPEG Smart Renderer 5」だ。
しかも今回は、単にコーデックとしてH.265/HEVCに対応した、というだけではない。高解像度化にあわせて、ソフトウェアの動作全般を見直し、4K動画を扱ってもストレスを感じない(あるいは感じ難い)ようにする変更も加えられた。その結果、64bit版専用となり、これまで対応していた32bit版OSでは使えなくなってしまったが、これは「ソフトの進化のためには致し方ない」ところだろう。
Windowsの世界では、ちょうどうまい具合にWindows 10への無償アップグレード期間中となっている。これを利用すれば、いま32bit版のOSを使っている人でも、(クリーンインストールは必要になるが)無償で64bit版のWindows 10に切り替えられる。動画編集にこだわる人にとって「TMPGEnc MPEG Smart Renderer 5」は、編集能力の強化とあわせて、64bit版OSに乗り換えるよい機会を与えてくれているのかもしれない。
(天野 司)