ソフトを開発しようと思った動機、背景
「子どもたちに楽しみながら課題に取り組んでもらいたい」ということが一番の動機です。「心の理論課題」は、もともとは人形劇などで行われていたものなのですが、コンピュータのアニメーションにしたらもっと興味をもって取り組んでもらえるだろうと考えました。本ソフトの主な対象として考えている発達障害、特に自閉症の特徴のあるお子さんたちはコンピュータへの親和性が高く、相性がよいので。それに、いつでもどこでもパソコンさえあれば、それ以外の特別な道具なしに実施できるようになります。その点も便利になるだろうと思いました。
開発中に苦労した点
どのような子どもにも、物語や設問を理解してもらえるコンテンツにすることにできる限りの工夫をしました。例えば、文字を読みやすくしたり、文字が読めない子には音声で理解できるようにしたり、画面だけ見ても話の大筋がわかるようにしたり、といったことです。ユニバーサルデザインを考慮し、それが完全に達成されたとまではいえないかもしれませんが、その実現に苦労をしました。
ユーザにお勧めする使い方
人とうまく関わることが難しかったり、集団生活が苦手だったりする子どもたちがいます。そのような子どもたちの抱える困難の背景に「心の理論」が獲得できていない、あるいはそれがうまく使えていないといった発達上の問題が存在していることがあります。「心の理論」とは心理学の概念なのですが、簡単にいうと「相手の立場に立って物事を考える力」「その人の行動の背後にある意図などを理解する力」のことです。そういった問題についての実態把握(アセスメント)を行う際の補助に利用できるツールとして本ソフトを開発しました。
アセスメントツールとしての使用は医師や心理士、特別支援教育教師などの専門家向けです。学校での活用例はこちらをご参照ください。
http://www.kokoro-cd.com/html/case_2.html
一般の方には、自閉症の特徴を持つ発達障害の子どもたちが対人場面で「どういうことの理解に苦労しているのか」を知るための手立てとしてお使いいただけます。
基本的に専門家向けですし、このソフトだけで診断的なことができるわけではありません。使用にあたり、その点はご留意いただきたいと思います。
論文、エビデンスについて
下記の論文に小学生が本ソフトを使った際の調査資料を掲載しています。
http://ir.u-gakugei.ac.jp/bitstream/2309/132631/1/18804306_64_41.pdf
これは、自閉症の特徴のある子とない子で、何年生でそれぞれの問題がどのくらいできるか、というデータが示されています。専門家が本ソフトで「心の理論」の評価をする際の目安として参考にしていただけると思います。
(東京学芸大学教授:藤野博)