心の理論(Theory of Mind)──他人の考えを推測したり、意図や感情を理解したりする能力──を持っているかどうかを評価・査定(アセスメント)するためのテスト「心の理論課題」を、子どもが興味を引きやすいアニメーションで実施できるソフト。「アニメーション版 心の理論課題 ver.2」は、子どもの「心の理論の獲得」に問題がないかどうかを評価・査定するために開発された支援ソフト。五つの代表的な心の理論課題がアニメーションに翻案され、パソコンを使って手軽に評価・査定できるようになっている。「集団生活になじめない」「対人関係でつまずきやすい」「軽度の発達障害(アスペルガー症候群、高機能自閉症などの自閉症スペクトラム、LD、ADHDなど)がみられる」といった子どもが対象。著作は藤野博・東京学芸大学教授、監修は小池敏英・東京学芸大学教授。
「心の理論」とは、
- 「他人との関わりの中で、相手が思っていることを直感的に理解できる」
- 「自分の言ったことがどう受け取られるかがわかる」
など、ふだん私たちが意識せずに使っている「人の心や考え方に関する常識的な知識」のこと。成長とともに自然に備わるものだが、自閉症などの発達障害を抱える子どもは、心の理論を獲得することが遅れがちで、他人とのコミュニケーションが苦手だと考えられている。世界中の多くの専門家による研究が進んで、すでに「心の理論」を評価する方法(心の理論課題)が確立され、広く心理臨床や教育の現場で活用されている。「アニメーション版 心の理論課題 ver.2」に収録された心の理論課題は、
- ボールのもんだい
- トランプのもんだい
- ハムスターのもんだい
- おもちゃばこのもんだい
- やきいものもんだい
の五つ。アニメーションの題材は遊びや日常生活など、友だちや家族の間で起きる身近な出来事。ストーリーの中で「登場人物が何を考えているか」「どんな行動をとるのか」といった課題が提示される。動作モードには、
- 途中で出題される質問に答えながら、物語を進めてゆく「チャレンジモード」
- 物語がそのまま再生され、自由に解説したり、質問したりできる「ストーリーモード」
の二つが用意され、目的や対象者に応じて使い分けられることが可能。さらに「チャレンジモード」には、子ども一人ひとりの個別の評価やトレーニングに用いる「個人用」と、教室などで大勢の子どもを対象に実施する「グループ用」とがある。グループ用では、あらかじめ用意された問題用紙をプリントで配布し、テストを受ける子どもは、プリントに解答を記入してゆく。テストを実施する人向けには「心の理論入門」「評価と指導の手引き」「使い方」といった丁寧な解説(いずれもHTMLファイル)が付属。発達障害児の親や周囲の人が、心の理論に対する理解を深めることにも活用できる。