本編のプレイ時間だけでも4〜5時間程度かかる長編ノベルゲーム。本編クリア後には本編の途中に選択肢が表示され、そこからさらに2種類のおまけシナリオを楽しめるようになっている。おまけといってもボリュームは本編に負けず劣らずで、トータルで12〜13時間は楽しめるだろう。内容は、本編が排他的な田舎町を舞台にした伝奇・猟奇的な物語。おまけシナリオは舞台とメインの登場人物こそ同じだが、青春・家庭ドラマ風だ。どちらもボリュームの多さを感じさせないほど読ませてくれる。特に本編は途中から意表を突く展開の連続で、息をつく暇がない。登場人物も非常に個性豊かで、魅力的に描かれている。
ただし──勢い重視で書かれているためだと思われるが──誤変換による誤字・脱字やてにをはレベルでの文章のミス、重ね言葉、日本語としておかしな部分が多い。物語の設定や展開の随所、そして挿絵の「健」さんがどう見てもご老体には見えないという突っ込みどころもある。演出によりウェイトがかかる個所が多いのも、読むのが早い人間にとってはストレスのかかるだろう。
だが、文章の訴えかける力が強いため、物語を楽しむ上ではそれらはすべて些細な問題となっている。「こまけぇこたぁいいんだよ!!」という迫力・おもしろさがある。「読み応えのあるノベルゲームを楽しみたい」という人にはお勧めだ。
(秋山 俊)