大学と病院を舞台にした、甘酸っぱい青春物語。作品のテーマとしてトラウマや闘病生活とそれに対するケアなどが入るため、重い描写も少なくないが、読後感は悪くない。新海進や日向灯といった大人組は、前作「あの丘の上まで」のメインキャラで、達美も繋がりがある設定だが、前作をプレイしていなくても、問題なく楽しむことができる。前作をプレイしたことのある人は、主人公とヒロインの後日談としてほっこりできるだろう。
文章のボリュームはかなりある。文章や台詞の表示が、画面下部に1行ずつ(時折2行)表示される形式のため、早く読むのには向かないが、一方で登場人物の語りを実際の会話のように楽しむことができる。このあたりは好みが分かれるだろう。
筆者が残念に感じたのは、なんといっても主人公たちのイラストがシルエットのみのところ。ラストに1枚、女の子の口元が表示される以外はオールシルエット。「シルエットの方がキャラクタを好きに想像できるからよい」という人もいると思うが、個人的にはもっとイラストを描いてほしいと思った。
(秋山 俊)