シンプルなネタゲーの皮を被った、やり込み要素たっぷりの傑作ゲームだ。ミニゲーム的な内容かと思いきや、意外にしっかりと“RPGしている”ところに思いっきり意表を突かれた。まさに脱帽ものだ。作者のアイデアとセンスのよさに敬服する。演出は心憎い。まず、なによりオープニングや冒頭の解説が完全に引っかけの罠だ。危うく王都の住人をそれなりの数集めて、王様に談判に行ったあたりで、ゲームを終えてしまうところだった。
ところが、街から出られることに気づいたあたりからが驚きの連続。次から次へと新たな発見があり、すっかりとゲームに引き込まれてしまった。ゲーム中にさまざまなヒントがさりげなく散りばめられているのも憎い。ゲームバランスもよく考えられている。これだけのゲームがわずか10日で制作されたというのが驚きだ。
戦闘も非常に楽しい。戦闘システムそのものも独特で、よくできているが、なにより「戦いは数だよ」ということを、これほど具体的に実現したゲームもめずらしいだろう。戦闘でパーティメンバーの残りが50人以上いても少ないと感じるなど、プレイしているうちに感覚がすっかりとおかしくなってしまう。老人や子どもも戦力の如何を問わず、戦闘に参加するというシュールさも楽しい。
(秋山 俊)