「XDIR」で「メタ宇宙」を美しく全貌するスプライトは、グラフィックキャラクタがアニメのセル画よろしく、画面上を自由に、しかもバックの画面と独立した形で動き回れる機能です。ファミコンでその力を発揮し、シャープの「X68000」にも取り入れられ、その名を不動のものとしました。このスプライト機能をソフトで、しかも、ハード版よりも機能豊富に、格調高く実現できたら……。
1979年の夏に「Lkit-16」というマイコンを購入しました。いまと違って画面表示が貧弱で、グラフィック機能もありません。しかも、メーカーからのサポートがまるっきりありませんでした。マイナー機への飽くなき挑戦がこのときからはじまります……。
これは「コンピュータが金のなる木」となる前の話です。この時代にソフト開発の原点があり、電脳愛の源泉もあります。ハンドルネームも永遠の恋人「Lkit-16」にちなんで、「Lkit」としました。
処女作「Moving」は、スプライト機能を組み込んだシミュレーションのためのアニメーションツールとして、Lkit-16、L3、S1、98と機種を換えながらも進化を続け、やがて訪れるCAI、CMIの裏方さんとして活躍していきます。
でも、コンピュータ戦略の矛先が教育に向けられた結果、学校現場に大きな混乱が巻き起こったのもこの頃です。いろいろなソフトディスクが氾濫しはじめ、そのディスクの整理に大わらわとなり、コピー天国といわれる学校は、正に地獄と化したのです。毎日のように持ち込まれるディスクが積もり積もって千枚を超え、さらに枚数は加速度的に増え続けていきます。
「ディスクをいちいち起動させずに中のファイルを見ることができれば、サブディレクトリの中が手軽に覗ければ!」──そのような切実な要求の中で「XDIR」は誕生しました。
MS-DOSの「DIR」コマンドに不満に感じ、その機能拡張版「eXpand DIR」の作成をはじめたのが1988年のことです。ソフト名を「EDIR」ではなく「XDIR」としたのは、8台目のパソコンとしてシャープの「X68000」を手にした時期であり、同僚もまたX68000党と、まわりが「X」一色の環境だったからです。タイピングリズムが少々悪いので、ちょっと迷ったのですが、結局、このイニシャルにこだわってしまいました。
「XDIR」も、専用ワープロのディスクの中身まで読める「MDIR(Multimedia DIR)」なるものまでバージョンアップしたのですが、時代も「MS-DOS」のOS貧困時代から「Windows」のOS飽食時代へと移り変わり、出番もなくなりました。その後は、学校管理システム「SSS」(Schoool Student System トリプル・エス=愛称トリエス)の開発に埋没したため、「XDIR」の開発はいつの間にか立ち消えとなりました。
そして現在、学校現場から離れ、「SSS」の開発を終えたのを機に、「Moving」「XDIR」の開発を再開しました。でも、正直なところは「過去の開発ソフトの束の間の後始末」という消極的な気持ちからでした。ところが根っからの凝り性ゆえ、どっぷりとハマってしまいました。
「大容量の「記憶メディア」や情報戦略的『メタデータ』(高次のデータ、超データ)がもてはやされるいま、『XDIR』に何か出番が与えられないだろうか」「『XDIR』に組み込むべき『大いなる機能』とは何だろう」──そのような自問自答の繰り返しの中で、「XDIR」の新しいスタイルを模索してきました。そして、それがいま、「XDIR Version 4」という形で実現できたのではないかと思っています。
「XDIR」は、開発当初が「宇宙ブーム」全盛期だったのと、元来の天文少年ゆえに、バリバリの宇宙スタイルで構成しています。ウリは「メタ宇宙を美しく全貌する」で、以下が特徴です。
- ●「Windows」コンピュータのハードディスクの全容や、その他のメタデータをツリー形式の星座として表示します
- 大容量ハードディスクの全検索には時間がかかりますが、検索情報を「XDIR」形式で保存することにより、いつでも瞬時に再現することができます。
- ●「XDB」で表形式の管理ができます
- 「XDIR meta Data Base」の略で、「桐9」風のデータベースです。
- ●「メタ宇宙の旅」では、「XDIR」で検索した宇宙を3次元で旅することができます
- 目の前に現れるのは「XDIR」星座と同じ宇宙なので、できるだけ多様な星座を表示しておいてください。超暇な方は、テラバイトハードディスク全検索データで、コントロールパネルのナビを頼りに、宇宙の彼方「イスカンダル星」までの旅を楽しんでみてください。
- ●「新世界チャート」では、メタデータからメタ宇宙の「星座」(チャート)を作成します
- メタデータは、ハードディスクの検索データに限らず、多種多様でメタ(高次)なデータです。「メタデータ」のマークをクリックすると、「ネバーエンディング・ストーリー」のように別ウィンドウで新世界が展開されます。新世界はWebブラウザで作成されているので、多彩な表現が可能です。
職業柄、教材やプレゼンなどのメタデータを格調高く展開できる「仕組み」の構築に力を入れています。そのために、サンプルチャート「xdir.xdir」や「physics.xdir」の完成度が低く、満足する出来となっていませんが、とりあえず参考になればと思い、提供しています。これから、いろいろな分野の「メタデータ」作成も含めて、完成度を上げていくつもりです。と同時に、多くのユーザに格調高い「メタデータ」の作成を、そして、いろいろな場で活用していただければと思っています。
- ●「下段アニメバー」は「Moving」へのプチ郷愁コーナーです
- このコーナーは大事業になりそうなので、開発を後回しにしています。「Moving」と「XDIR」を格調高く統合化した「HTXW」(Hyper Text Wall:月刊「I/O」1993年1月号で発表)という作品もあるのですが、今後はこれらを統合したサイトとして充実させていく予定です。いまはクリックで消して、画面を広く使ってください。メタデータが多様なほど、画面が広いほど(4Kなら最高)、圧巻であるというのも「XDIR」のウリのひとつです。
まだまだ不満な点も多々あるのですが、不備な点も含めて、今後のバージョンアップで解決していきたいと思っています。
(Lkit(武石 秀男))