「色を数値で表現する」というと、普通の人が真っ先に思い浮かべるのはRGBによる表現だろう。光の三原色たる赤、緑、青、それぞれの色の成分を数値として表すもので、「コンピュータ上で色を扱う」といえば、ほとんどの場合にはこのRGB表色系が使われる。ただ、RGB表色系では、世の中に存在するすべての色を表現することはできない。その代表ともいえるのが、レーザー光線などの「単一波長光」と呼ばれるものだ。特に緑色のレーザー光などは、人間が目で見ることができても、コンピュータの画面上で同じ色を表示させることはできない。そこで必要になってくるのが、すべての色を表現できる表現方法(表色系)だ。これにはさまざまな方式があるが、なかでもポピュラーなのが、CIE(国際照明委員会)によって規格化されている「XYZ表色系」と呼ばれるものだ。
「ColorAC」は、このCIE XYZ表色系をグラフで表現した「色度図」を作成するソフトだ。CIE XYZ表色系のうち、横軸にX、縦軸にYを使って色をプロットしたのがCIE xy色度図で、「ColorAC」では主にこの図を描いてくれる(本文で説明したように、ほか色度図も描ける)。
CIE xy色度図では、人間が目で見ることのできる光の色は、ちょっと歪んだ「D」のような形状でプロットされる。この内側が、人間が目で見える範囲だ。一方、先ほど「RGBでは人間が目で見える色のすべてを表現できない」と書いたが、RGBで表現可能な色の範囲は、CIE xy色度図上ではRGBの各ポイントを頂点とする三角形として描かれる。
つまり「D型の可視光領域の内側で、RGBの三角形の外側」となっている領域が、RGBでは表現できない色の範囲ということ。これらを合成した図は、例えばコンピュータ用のディスプレイの性能を示す指標としてよく使われる。ディスプレイがどこまで広い範囲の色を表現できるかを、視覚的に表現できるからだ。
このように、特定分野では「色度図」はよく使われるのだが、実は、この図を描いてくれるソフトは、世の中にはほとんど存在しない。まさに唯一、ともいえるのが「ColorAC」というわけだ。使いこなすには、色の表現に関するくわしい知識が必要となるが、それさえあれば、本当に簡単な操作で色度図を描いてくれる。そうした仕事をしている人にとっては、実にありがたいソフトなのだ。
特定分野向けのソフトであるため、誰にでもお勧めできるようなものではないが、さまざまな「色」を扱うプロの方や、「色」について勉強をしたい人にとっては、欠かせないソフトだといえる。
(天野 司)