ソフトを開発しようと思った動機、背景
ずいぶん前から、xy色度図を手軽に描くようなソフトを探してもが見つからず、フリーソフトがあればほしいと思っていました。ソフトを自分で作るということについては、色度図もグラフの一種ですので、自作しようとすると、まず座標軸やメモリを振ったグラフを作り、その上に色度図を描画する必要があります。汎用のグラフソフトほどではないにしても、手間がかかりそうに思えます。たまにしか使わない色度図のために、そこまでやる気になれずにいました。
あるとき「見栄えのよい色度図を作る手段がほしい」という意見を何度も聞く機会があり、「プライベートで作り、フリーソフトとして公開すれば、たくさんの方に使ってもらえて、苦労も見合うだろう」と考えて、作りはじめました。
開発中に苦労した点
苦労した点は以下の通りです。
●色度図の色をどう決めるか
パソコンモニタで表示するにしても、印刷物にするにしても、色度図全体を正しい色で構成することはできないので、どんな色にするかは一義には定まりません(これが正解というものはない)。いろいろな方法を試して、よりよいと思えるものを追及しました。
●色度だけのデータと、輝度を持つデータの扱いをどうするのがよいのか
例えばCIELABは、輝度を持たない色度のみのデータはプロットできないのですが、いくつかの仮定を置いてデータ変換すれば、プロットすることが可能です。このデータ変換を手作業で行うのでは本末転倒と思い、自動的に変換してプロットする実装をしたのですが、複数の座標系の相互変換と併用すると、場合分けが非常に多くなり、コード量が増えて、バグ取りが困難になりました。表示結果が異常になっても、それが仕様と考えるべきか、バグなのか、逐一吟味する必要があり、予想外に苦労しました。現時点でも、より理想的な動作として、まだまだ仕様を吟味する余地がありそうです。
●カバー率の計算
カバー率の計算では、色度範囲の重なりを求めるため、多角形の重なり面積を求める必要があるのですが、欲張って、任意の多角形で計算ができる仕様にしました。重なる図形の頂点が一致してしまう場合など、例外処理が複雑で、正しく重なり部を求めるアルゴリズムを考えて実装するのに苦労しました。
ユーザにお勧めする使い方
◆プレゼン資料や製品カタログ、色の説明資料などで、きれいな色度図を作りたい場合にぜひ使ってみてください。プレゼン資料ならば、クリップボード経由でプレゼンソフトのドキュメントに貼り付ける方法がお勧めです。
◆「ColorAC」の操作画面に描画している色度図は、インタラクティブに座標系を変えたり、手軽に範囲の拡大・縮小などを行ったりできるので、色度データをプロットして眺めたり、考察したりするのに最適です。
◆カバー率の計算は多少面倒なので、電卓などで簡単に計算するわけにはいかないですが、「ColorAC」ならば、手軽に求められます。
◆(解釈に気をつける必要がありますが)任意座標のMacAdam楕円を手軽に描画できます。色ムラが目立つかどうかなどの考察に便利です。
今後のバージョンアップ予定
いまある取扱説明書では、まだまだ使い方がわかりづらいと思いますので、まずFAQなどのドキュメントの充実を図りたいです。また、ソフトの機能ですが、リクエストをいただければ、機能追加も検討しますが、それよりも、処理の正確性など、完成度を上げる方向を考えています。
(Phonon)