プレイして印象的だったのが、得体の知れない恐怖に包まれている雰囲気。大きな音や大胆なグラフィックで驚かせるわけではなく、ジワジワと背筋が凍るような恐怖を体験できる。主人公「イヴ」は、美術館内を歩き回っているうちに、誰もいなくなった館内に閉じ込められてしまうが、閉じ込められるまでの過程が非常に恐い。周囲から人が誰もいなくなったと思ったら、窓の向こうを誰かがスッと横切ったり、いきなり血糊に染まったり……と、不可解な出来事が矢継ぎ早に起こる。プレイヤーは、この“静かだが畳みかけるような恐怖”に戦慄するはずだ。
謎解きの難易度はそれほど高くはないが、突発的な罠が結構あり、ゲームオーバーになる頻度はかなり高い。特に絵画の中の女性が額縁から半身を乗り出し、追いかけてくる場面は、恐怖とともに焦りで死にまくってしまった。追いかけてくる者から逃げるシーンなどには、若干のアクション要素が含まれるが、詰まってゲームが進まなくなるほどではない。プレイヤーキャラの命を表す「赤いバラ」は、花瓶に活けることで、持っている数をMAXまで回復させることができる。花瓶を見かけたら、必ずバラを活けて回復させよう。
グラフィックも非常に凝っている。キャラクタのイラストなどは、作品の世界観に合った独特な雰囲気をまとっている。また2Dのドットグラフィックを駆使して、巧みに“怖さ”を演出している。特に美術館内に展示されている「ゲルテナの作品」などは非常に見応えがある。ぜひ、注目してほしい。
プレイ時間は3〜4時間程度だが、非常に濃密なホラー体験を味わえる。ジワジワと追い詰められる静かな恐怖を体験できるので、ミステリーやホラー系のアドベンチャーゲームが好きな人は、ぜひプレイしてみていただきたい。
(早川 陽子)