ひと言でいうと「かつて夢中になった懐かしいRPG」。キャラクタや背景はすべてドット絵で表現され、テキストもひらがなが中心。戦闘システムはランダムエンカウントのフロントビューバトル。町では住人一人ひとりに話を聞き、カギを使って宝箱を開ける。武器防具屋で装備を整え、宿屋でHP/MPを回復し、教会で死んだ仲間を蘇生してもらう。主人公が多くを語らないストイック(?)なところも、昔のゲームそのものだ。かつてファミコンでRPGを遊んだ人なら、ノスタルジックな気持ちになることは間違いない。個人的には、音楽に注目していただきたい。どこかもの悲しい雰囲気が8bitのピコピコサウンドで見事に表現されている。このサウンドも、懐かしさを感じさせる理由のひとつだろう。ストーリー展開も見逃せない。主人公や仲間同士でそれほどコミュニケーションがあるわけではないが、後半に進むにしたがい、あっと驚く意外な展開が待っている。
「Wish Dragon」には、移動時のダッシュ機能がない。キャラクタのレベルがアップしてもHPやMPが回復しない。イマドキのRPGでは当たり前になっているさまざまな便利機能が、「Wish Dragon」には搭載されていない。しかし、かつてファミコンでRPGをプレイしたとき、そんなことでイライラしただろうか? そんな機能がなくても、十分楽しめたのではないだろうか。この作品は「便利な機能などなくても、ゲームはおもしろい」ということを思い出させてくれる。
かつてファミコンのRPGを遊んだ人は、ぜひ「Wish Dragon」をプレイしてみてほしい。キーボードでも十分に楽しめるが、個人的にはぜひゲームパッドを使って遊んでほしい。あのころ夢中になった、あのときの感覚を思い出させてくれる、珠玉の作品だ。
(早川 陽子)