主人公の「少年」による冒険譚という、ファンタジー小説のような王道ストーリーを楽しめる。異空間に迷い込んだ上に、竜の姿になってしまった少年の冒険が描かれるが、少年は多くを語らない。それゆえ「プレイヤー自身が少年になりきってゲームを進める」という没入感が高い。異世界で出会うキャラクタとのやり取りも微笑ましいものが多く、ハラハラドキドキしつつも、どこか安心してプレイできるハートフルな雰囲気が心地よかった。戦闘はそれほど難しくなく、「序盤でモンスターと戦って、いきなりLPが尽きてしまう」ということはまずないだろう。シンボルエンカウントなので、モンスターとの戦闘回数もある程度自分で調整できる。基本的に目につくモンスターすべてと戦っていれば、余計なレベル上げは無用。戦闘では、「特技」を発動させるためにコマンド入力をしなければならないが、回避策もちゃんと用意されている親切設計だ。楽しみたい人は楽しみ、コマンド入力のスタイルが合わない人はしなくてもよい。筆者の場合、慣れないウチは結構「コマンド入力キャンセル」のお世話になった。
戦闘だけでなく、マップ移動やダンジョン探索など、ちょっとした場面にもユニークな仕掛けが用意されており、やり込み要素も充実している。システムがとてもよく考えられており、しかもストーリー進行を妨げないバランスのよさは特筆したい。
ストーリーにも注目してもらいたい。先ほど「王道」と書いたが、一見スタンダードに見える展開の物語を、きちんとおもしろい内容に仕上げている点は評価したい。プレイしていてなかなか止めどころが見つからず、「あともうちょっとだけプレイしようかな」ということを繰り返していたら、かなりの時間が経ってしまっていた。少年の目線で素直に冒険を楽しめる良作だ。「かつて子どものころ、外国のファンタジー小説に心を躍らせた」という人に、ぜひ遊んでいただきたい作品だ。
(早川 陽子)