仲間も、家族も、恋人も、失った。
快楽と金、それだけのために奴等はすべてを奪っていった。
燃えるようなその体を打ち震わせ、ジョニーは誓った。
……奴ら三人を皆殺しにすることを。
という煽りがサイコーにイカしたゲーム。それが「勇者御一行様殺人事件」だ。仲間を皆殺しにされた主人公が復讐のため、単身三人の悪党に立ち向かい、その殺害を目指すという内容。ただし主人公はスライム。多くのRPGでザコモンスターの代表として殺されまくっているスライムが、勇者たちのパーティに逆襲するという異色のゲームとなっている。
しかし、このスライムが非常に弱い。まともに勇者たちと戦っても勝てないどころか、下手をすると村人AやBと戦っても、あっさりと返り討ちにあってしまいそうなほどの弱さ。このひ弱なスライムが勇者たちに立ち向かうには、クリスタルスライムならではの透き通った体を利用して、勇者たちに見つかることなく行動し、あらん限りの知恵を振り絞って罠を仕掛けるしかない。幸い、勇者たちは誰一人として復讐に燃えたスライムが自分たちをつけ狙っていることに気づいてはいない。
もうひとつの武器は、知り合いモンスターのところで入手した「魔法の書」。そこに書かれている魔法を使えば、建造物を外界から閉ざすことができる。これにより、ターゲットを数時間特定の建物の中に閉じ込め、その間に隙を窺って、じっくりと攻略することができる。
そしてある日、ついにチャンスが訪れた。小さな奇妙な館の中に勇者たちを閉じ込めることに成功したのだ。この館の中には一歩間違えば命取りとなる危険な仕掛けがあり、これらを上手く利用すれば、勇者たちの殺害に成功するかもしれない……といったところからゲームの本編がはじまる。
ゲームの内容はストーリーにのっとって展開する、独特のシステムを採用した一種のパズルゲーム。倒すべき敵は「勇者」「戦士」「魔法使い」の三人。主人公以外のキャラクタは、主人公が赤いヘキサグラムの上に乗って時間を進めるまで一切行動をしない。プレイヤーは、主人公のスライムを操作し、館の中に落ちているアイテムを運んで、適切と思う場所に配置し、時間を進めてその結果を見る。
配置が適切であればストーリーが進展し、次のフェーズに移行する。適切でなかった場合は、ストーリーがうまく転がらず、自殺してやり直すしかない。この繰り返しによってストーリーを進めてゆく。時には、スイッチやレバーを操作して、館の仕掛けを作動させたりしなくてはいけない場面もある。勇者たちに接触して決定キーを押すことで、その会話などを聞いたりすることもできる。
どのアイテムをどの場面でどう配置して使用するか、ひたすら試行錯誤の連続。すべてのアイテムを適切に使用してシナリオを最後まで進めるには、かなり手こずらされるだろう。シナリオそのものの長さは短いが、解決にはじっくりと腰を据えてかかる必要のある、やり応えのあるゲームだ。アイデアやストーリーそのものも、小品ながら非常によく考えられている。頑張ってクリアし、ぜひ感動のラストを見てもらいたい。