ソフトを開発しようと思った動機、背景
私自身が点訳のボランティアに携わっており、点字の啓発活動を目的として、Webサイトでさまざまな点字データを公開しています。点字をまったく知らない人たちに関心を持ってもらうため、その点字データを普通のテキストでも簡単に表示させる必要がありました。点字のフリーソフトには高機能なエディタがあるのですが、初心者にはハードルが高いので、「一太郎ビューア」のようなものを意識して、誰でも手軽に点字を読めることに特化して開発しました。
開発中に苦労した点
まず、フリーで利用可能な点字フォントには描画品質の悪いものしかなかったため、点字フォントから自作する羽目になりました(点字フォント(Unicode6点))。
点字は文脈によってさまざまなパターンに異なる解釈ができる場合があり、「点字認識エンジン」はこのソフトの心臓となる機能なのですが、まだ発展途上の段階で正しく表示ができていません。動作速度が遅いとユーザから苦情が来るため、性能面とのバランスにも気をつけています。
また、画面の表示部分にIEコンポーネントを利用しているのですが、Microsoft社がIEやWindowsをバージョンアップするたびにレンダリングの仕様を変更し、その影響で表示が崩れるので、調節の対応に苦労しました。
ユーザにお勧めする使い方
点字とはどういうものかをちょっと知りたい方など、初心者の学習用を主に想定しています。クリッカブルURLなど、ほかの点字ソフトにはない独自の機能を備えて、興味を持っていただけるよう工夫しました。小さい実行ファイル単体で動作するので、「USBメモリやCD-Rなどの媒体に、点字データと一緒にビューアソフトを入れて渡す」という使い方もできます。
また、開発当初はまったく想定していなかったのですが、点訳ボランティアが校正の用途でも使用するようになってきています。点字の形式上の誤りがある個所は赤く表示して注意喚起する機能があるので、形式チェックの用途にも使用できます。
今後のバージョンアップ予定
改行マークなどの細かい編集記号を表示させてほしいという要望があったため、対応する予定です。また、スマホで点字データを閲覧したいというニーズも大きいため、モバイルアプリへの移植を検討しています。
ただ、サラリーマンの本業が忙しくてコーディングの作業時間があまり確保できないため、いつ実現できるかは申し訳ありませんが、明確にお約束できません。日本のIT分野の視覚障害福祉は、この10年以上ほとんど停滞してしまっているのですが、その責任の一端を感じています。
(なかがわ)