ソフトを開発しようと思った動機、背景
Anniversary Updateの配布がはじまった2016年8月頃、知人から「会社のPCの具合が悪い」という相談を受けました。社員が10名ほどの典型的なSOHOスタイルの会社です。コンサルタントの勧めに従い、Windows 10を導入したタイミングから社内のPCの具合がおかしくなり、多大なストレスを抱えているとのこと。要約すると問題点は三つ。- (1)ネットワークの速度が極端に遅くなった
- そのオフィスが契約しているプロバイダはIPv4専用でした。ここにIPv6優先設定の10が入ってきて、ネットワーク機器に混乱が起き、遅くなっていました。これは10をIPv4優先にして対処しました。
- (2)10にアップグレードしたPC6台のうち2台の調子が悪い
- 1台はメモリが少なく、買い替え期ということもあり、買い替えということで未確認。もう1台を「レスキューキット」で確認したところ、プリンタドライバが7以前の古いものが入っており、これが理由でBSODを起こしていました。このような場合はハイバネーションOFFで解決します。ただ、印刷の不具合はドライバをWindows 10用にする必要がありますが、プリンタドライバの入れ直しでPCが起動しなくなる事故が実在していることより、システムバックアップの取られていないPCのため、買い替えを推奨しました。
- (3)OSの自動更新とどう折り合いをつけるか?
- ヒアリングの結果、OSの自動更新はONで常に最新にするとのこと。このオフィスでは時間の経過とともに症状がひどくなっている気がするとのこと。私は、OSの自動更新はOFFを推奨。ただし、顧問のコンサルタントは、セキュリティ上の理由からONを推奨していました。
ここでOSの更新のメリットとデメリットを整理しましょう。メリットは、
- セキュリティ問題といっていますが、要は改良されたモジュール使用できる
- OSのバグの改修の恩恵を受けられる
- 新しい機能を使える
一方、デメリットは、- いままで動いていたものが動かなくなるリスクがある
- 新しいバグに遭遇するリスクがある
- バグの改修はOSの仕様変更という側面を持ち、バグに合わせて設計されたソフトは動かなくなる
といったことが挙げられます。このオフィスでは、デメリットが噴出して業務に支障をきたし、根幹システムを一から作り直す準備をしているとのことでした。
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このオフィスに対してはマイクロソフトの公式見解「CBB(Current Branch for Business)」を提示しました。Windows 10には三つの自動更新モデルが存在します。
- CB(Current Branch):常に最新のモジュールを入れる。OSの初期値
- CBB(Current Branch for Business):配布から4ヵ月間にユーザPCからトラブルの送信レポートのなかったものだけを入れる設定。Windows 10 Proエディション以上で使用可能
- LTSB(Long Term Service Branch):医療装置、販売時点管理システム、ATM用に用意。2〜3年に一度のペースで更新。セキュリティパッチ、バグフィックスは適時
Windows 10導入後、しばらくして発生するトラブルの原因はCBと指摘できます。マイクロソフトの公式見解を意訳すると、Windows 10 Home版にてCBで配布し、不具合が発生したらマイクロソフトに自動送信し、それが4ヵ月以上送信がなければCBBに昇格する。CBBはProから使用できる。絶対に止まってはいけない高信頼性用にLTSBを用意している。マイクロソフトは2〜3年に一度のペースでの更新が適切と考えているようである。う〜〜ん、エンドユーザ、コンサルタント、メーカの意思の疎通が取れておらず、混乱している。これを整理するためのひとつの解法としての提示が「Windows10レスキューキットEX」です。
開発中に苦労した点
Windows 10の問題点をまとめたブロガーの言葉ですが、最近安定したと思ったら、その後、一進一退とのこと。つまり細かい仕様変更が頻発しており、プログラマの視点では対処が困難な状態であるということでした。考えれば考えるほど気が散ります。……ということで切り口を二つに分けました。
- ナレッジウェアベースを意識し、ユーザの情報収集をアシストできるようにする
- ユーザがストレスなくクリーンインストールできるよう、ワンタッチバックアップ機能を用意する
今後のバージョンアップ予定
従来、ソフト開発するにあたり、実装できなかった機能があります。- 「レスキューキット」の趣旨とかけ離れており、実装で焦点がぼやけるもの(上記のIPv4の設定は「10」云々ではなく、初期値の問題で、安易に実装することをためらいます)
- 簡単なOSの設定とか、あまりに簡単でフリーウェアによる配布が好ましいもの
- タブレットPC用のカスタマイズ
特にタブレットPC用の機能強化を重要に考えています。16GB〜64GBの小容量ディスク、2GB〜4GBのギリギリのメモリ、そしてWindows 10実装と、小規模PC用のメンテナンス機能の強化を実施する予定です。
((有)電机本舗)