ソフトを開発しようと思った動機、背景
「轍 Wadachi」の開発は、いまから10年前の2006年にさかのぼります。当時、Googleマップが初めて登場した頃で、自由に拡大・縮小とスクロールができる地図ということで、大いに注目を集めました。そしてGoogleでは、APIという形で自分のサイトにGoogleマップを組み込めるプラットフォームを提供しました。これは大変に画期的なことで、すぐに思いついたのは「趣味の自転車のGPSログをGoogleマップ上に描いてみたい」ということでした。しかし、当時は自動でそういうことをやってくれるソフトが皆無で、「これは自分で作るしかない」と思ったのが開発のきっかけです。
また、APIを使って自分のサイトにマップを組み込むことはJavaScriptの知識が要求されるため、プログラミング経験のない人にはハードルの高いものです。そこで誰もが簡単にGPSログをGoogleマップ上に重ね合わせできることを目標に開発がはじまりました。
開発中に苦労した点
開発当時はGoogleマップの機能がいまに比べて貧弱で、開発に関する情報もあまり多くありませんでした。そのため、距離を計算するだけでも結構大変なことで、ほとんど手探り状態で情報を集め、開発を進めました。いまでこそさまざまなAPIが提供されていますが、当時はグラフを描画する便利なAPIも存在せず、プロフィールマップもすべて自力で描画する部分にかなり苦心しました。
ユーザにお勧めする使い方
「轍 Wadachi」は、もともと自分でサーバを確保し、自力でWebサイトを運営している方が自分のサイトにGoogleマップを組み込むことを目的に開発したものです。しかし、時代とともにWebのあり方も変遷しており、いまでは自力でWebサイトを構築する方は少数派となり、blogやSNSが主流になりつつあります。そのため、従来のような形態での利用方法は次第に少なくなり、もはやほとんど役割を終えたといっても間違いではありません。
そこで、時代の潮流に合わせて「轍 ONLINE」(http://map.cyclekikou.net/)というクラウド型のサービスを新たに構築し、「轍 Wadachi」と連携して簡単にアップロードできる仕組みを提供しました。自分でサーバを確保してアップロードするのは初心者にはハードルの高いものですが、「轍 ONLINE」では難しい専門知識なしにほぼワンクリックでアップロードが可能ですので、取得したGPSログをblogに貼り付けて公開したり、SNSでシェアしたりして楽しむことができます。
またVer.4では、GPSに依存しない新規トラックログの作成機能が搭載され、地図上でクリックすることによって「仮想」のトラックログを簡単に作成できるようになりました。これにより、予定ルートを作成してプランニングに活用したり、GPSを使っていなかった頃のツーリング記録を作成したりすることも可能になりました。
今後のバージョンアップ予定
上で述べた通り、従来型のWebサイトは衰退しつつあり、すでにやれることはほとんどなくなっています。したがって、これからの開発方針としては「轍 ONLINE」をベースにしたクラウド連携機能のほか、国土地理院やOpenStreetMapが提供するさまざまな無償サービスとの連携を中心に考えています。
(Logical Arts)