小学生の少年・少女の視点で語られるハートウォーミングな物語。三人の子どもの心情が丁寧に描かれている。全部で12の話からなり、話によって視点人物が変わるため、それぞれの子どもの気持ちをきちんと知ることができる。それぞれの話の長さは短めだが、そのぶん無駄に引っ張られることなく、スッキリと読めるのもよい。視点人物が小学生ということもあり──それぞれが問題を抱えているとはいえ、内容はそれほど深刻なものではないため──全員が純粋なキャラクタとして描かれているのも、読んでいて気持ちがよかった。作者のあとがきによれば、思い切ってカットされたエピソードがかなりあるようだ。それらを読んでみたい気持ちもあるが、この作品のスッキリとした読後感のよさを出すにはこれで正解なのだろう。一話一話がほぼ独立していて、先のエピソードをほとんど引きずっていないので、後口は軽い。
短時間でサクサク読めてほっこりする、気持ちのよい短編ノベルだ。
(秋山 俊)