抜群の文章力が光る、とても読み応えのあるサウンドノベル。一部、文章が一切なく、画像とサウンドのみで状況を表した演出などもあり、サウンドノベルならではの作品に仕上がっている。物語は、詠子の視点で描かれた「Alice」と足立尚人の視点からその後日談を描いた「Cage」の二部構成となっており、後編の「Cage」は「Alice」を最後まで読んで、はじめて読むことができるようになっている。どちらも選択肢のない、一本道のノベルだ。
本作品の魅力は、なんといっても心理描写の巧みさにある。特に前半の「Alice」における詠美の描写は圧巻。詠美の心情にグイグイと引き込まれ、彼女の焦りや不安、恐怖が我がことのように感じられた。
サイコサスペンスの要素が強い前編に対し、後編はミステリーの要素が強い。地味な立ち上がりだが、詠美のことが気になって読んでいるうちに、やはり物語に引き込まれてしまった。
もうひとつの見どころは、画像による表現力だ。画像は一部を除いて写真が用いられているが、使い方が非常にうまい。物語の状況をそのものズバリでなく、それでいて端的に表した写真が用いられており、リアルなイメージをこれ以上なく喚起させられる。
(秋山 俊)