発音・発声に障碍を抱えている方を支援し、音声によるコミュニケーションを可能にするソフトだが、それに加えて文字パレットからの入力に対応することで、キーボードを使えない状態でもマウス操作で利用できるところがポイント。スマートフォンのフリック入力は、文字パレットが十字状なのに対して、「クイックトーク」では桝目状(田の字型)という見た目の違いはあるが、操作感覚としてはほぼ同じだ。そのほかの違いとしては、濁音、半濁音用のパレットや拗音入力専用パレットがあること、英字入力用のパレットはなく、数字入力に関しては「0」ボタンで0から4まで、「5」ボタンで5から9までをフリック入力するようになっていることなどが挙げられる。
「常に表示」モードでは名前の通り、文字選択用のパレットが常に表示されているので、(1)主文字をポイント→(2)サブ文字をクリックという操作になる。ボタンを押しながらマウスを動かさなくてもよく、ドラッグ操作が苦手な人でも使えるし、ノートパソコンのタッチパッドでも指一本で操作できるところもメリットだ。
「登録文章」の絞り込み検索機能はとても便利。フリック入力では一文字入力するごとに絞り込みが行われるが、キー入力の場合はこのような連携がないようだ。登録数が増えればリストからの選択が面倒になってくるので、キー入力でも簡単に絞り込みができるようになると、タイピング派の人にとっても望ましいのではないだろうか。
テキストボックスには「貼付」ボタンが用意されているが、コピー/切り取り用もあれば、「クイックトーク」での音声読み上げだけでなく、ワープロその他のアプリケーションと連携しての文字入力ツールとしても利用できるようになるのではないかと思う。実は【Ctrl】+【X】や【Ctrl】+【C】といったキーボードショートカットは利用できるのだが、キー操作が苦手な方のことを考えると、専用のボタンがあってもよいのではないかと思った次第。
注意すべき点としては、セットアップ時に「q_talk」というフォルダをDドライブのルート直下へコピーしなければならないという制限があるので覚えておこう(すなわちDドライブがないパソコンでは動作しない)。
タイピングに慣れたパソコンユーザにとっては一見縁が薄そうにも思えるフリック入力だが、「クイックトーク」はそれをうまく活用している。のどの手術で一時的に発声が難しくなっている人なども含め、さまざまな場面でコミュニケーションの役に立ってくれるだろう。
(福住 護)