行き倒れて死にかけた少女が、森の奥の屋敷で風変わりな三人の青年を相手に経験する、ちょっとホラーな物語。深い森の中で行き倒れ少女は、見知らぬ青年に拾われ、使用人として働く
「街で噂の伯爵様」は、人気のない森の中で行き倒れて死ぬ寸前だった少女が主人公の“恋愛ファンタジーアドベンチャー”。「女性キャラが三人の男性キャラを攻略する」という設定の女性向け恋愛ゲームだが、男性でも十分に楽しめる。用意された短編ビジュアルノベルはギャグ、ダークなど、まったく雰囲気の異なる全16パターン。
ゲームの主人公は18歳の少女「シエナ」。不況の波に襲われて、家業は倒産。両親はシエナを見捨て、手紙を残して夜逃げしてしまい、シエナは住む場所も担保に取られて、追い出される。困り果て、のどかな生活に憧れて田舎へ行こうと決意するシエナ。だが、旅路の途中、崖から落ち、滑って川に流されてしまう。獣に追われて逃げ回ったりした結果、深い森の中で迷い、ついには空腹で力尽きて、行き倒れてしまう。
次にシエナが目を覚ましたのは立派なお屋敷の中。助けられた恩返しを申し出たシエナに対し、屋敷の若き主が提示したのは「死ぬまで屋敷で働く」こと。主いわく「俺の土地に落ちていたお前は俺のモノだ」。一瞬、呆気にとられるが、考えてみれば、行く当ても、働き口もなく困っていたところなので「おいしい話よね!」とあっさりと受け入れてしまう。かくして、変わり者ばかりが住む屋敷での使用人としての生活がはじまる……。
全員が何らかの謎を秘めた三人の男性キャラは、誰から攻略してもよい
森の奥の屋敷の住人は、いずれも非常に個性的な三人の男性。
「ヴァルトレート・グラーフ・フォン・ウールヴヘジン」は、屋敷の主で伯爵の20歳の青年。子どものころに突然、親が家を出て行ったり、使用人が次々と辞めてしまって居着かなかったりで、人との離別に対してトラウマを抱いている。他人と会話することに慣れておらず、物言いもきついが、世間知らずのせいもあって、何でも素直に受け取ってしまう。街に下りることはほとんどなく、街では悪い噂が流れている。生活は夜型で、夜9時から朝7時まで自室から出ないよう、シエナに命ずる。
「ダリム」は、ヴァルトレートの世話や屋敷の維持をすべて賄っている、屋敷でただ一人の使用人。物腰の柔らかい、とても優しい青年だが、言葉を話すことができない。右目に眼帯をし、包帯を巻いた姿をしているため、街の子どもたちからはミイラ男とからかわれたりする。
「ユーリィ」は、26歳のネクロマンサー。ヴァルトレートの身体を研究に使おうと口説いており、シエナのことも口説く。ヴァルトレートの家庭教師ということになっているが、実際は何もしていない、ただの居候。長い間姿を見せなかったため、屋敷を出て行ったものと思われていたが、倉庫の箱の中で寝ているところをシエナに発見される。
エンディングやイベントCGが豊富に用意され、攻略し甲斐がある
ゲームの内容は、マルチエンディング型の男性攻略アドベンチャーゲーム。攻略対象となるのは、三人の屋敷の住人。制作エンジンには「吉里吉里」が採用され、分岐が多く、エンディング数の多い短編ビジュアルノベルとして楽しめる。
ゲーム前半は、屋敷内の「廊下」「中庭」「倉庫」「書斎」から、どこに行くかを選択してストーリーを進める。表示される移動先は、それより前の選択で変化し、それまで行けなかったところが選択できるようになったりもする。これを4回繰り返すことで、後半のルートが変化する仕組み。移動先でのほかのキャラとの会話中に選択肢が表示されることもあり、その選択によってもルートは分岐する。
後半は、会話中の選択肢のみによって、ルートが確定されてゆく。
エンディングの数は全部で16。イベントCGは19枚が用意され、ゲーム終了後にメニューから「エクストラ」を開くことで、「キャラ紹介」「イベント一覧」「スチル一覧」「エンド一覧」などを閲覧できる。「エクストラ」ではそのほかにも、三人のキャラそれぞれのベストエンディングのその後を知ることのできる「小話」や、「あとがき」「設定資料」などを見ることができる。