とても読み応えのある作品だ。それぞれ心に傷や歪みのある五人の男女によって織り成されるドラマがおもしろい。とりわけ「ウェザーリン」がよいアクセントになっている。ウェザーリンが登場するだけで一気にサスペンス性が高まり、その先の展開がどうなるのか早く知りたくて堪らなくなる。後日談でのエピソードといい、実に存在感のあるキャラクタだ。もちろん、それ以外の四人も個性的で魅力的なキャラクタとして描かれている。なかでも筆者のお気に入りは「パシフィカ」。本作品のヒロインはもちろん「ヒュナ」なのだが、パシフィカも決して負けてはいない。第二のヒロインといってもよい(個人的には、本作品の展開だとパシフィカの方が上か、悪くても痛み分けではないかとも思う)。
一本道のドラマだが、ここはぜひ分岐して、別ルートも作ってほしかったところ。物語後半は、少し駆け足で進み、若干強引に感じられた展開もあった。このあたりを埋めた上で、ルートの分岐も備えたバージョンの制作を強く期待したい。
(秋山 俊)