テレビ放送がアナログからデジタルへと完全に移行した結果、パソコンにおける録画や再生の自由度は正直なところ、かなり低下したといってよい。本来、パソコンは、アナログデータよりデジタルデータの方が遥かに親和性が高く、使い勝手は向上するはず。にもかかわらず、これが真反対の結果になっているのは、デジタル放送のほぼすべてが著作権保護されているためだ。著作権保護により録画データが暗号化された結果、あるパソコンで録画されたデータをほかのパソコンで再生したり、録画したデータを編集したり、再エンコードして好きなメディアに収めたりといった行動──アナログ時代にはあたりまえに行えた──は制限されるようになった。録画したデータのBlu-ray/DVDへの保存など、ユーザなら普通に行いたくなるような作業は、その機能に対応した一部の製品を除いてパソコンでは行えなくなり、もっぱらBlu-rayレコーダなどのAV機器で行わざるを得なくなってしまった。
しかし、そうしたAV機器は、一般向けであるがゆえの操作性の悪さや劣悪なレスポンス、また肝心なところで機能的に物足りないといった部分があるのも事実。パソコンの操作に慣れた人ほど、パソコンでの軽快な操作や融通の利く操作性を懐かしく思うのではないだろうか。
「DiXiM BD Burner 2013」は、そうした「『パソコンが一度は手にしながら、デジタル放送化で奪われてしまった自由度』を再びパソコンに取り戻すためのソフト」といってよい。著作権保護を回避するといった違法なことをするわけではない。単に録画した番組をBlu-rayやDVDメディアにムーブするだけのシンプルなソフトだ。Blu-rayレコーダならば単体でもできる操作なので、あえてパソコンを使う必要性を感じない人もいるかもしれない。
だが、そのあたりまえの操作がパソコン上で、しかもネットワーク経由で行えるようになるだけで、操作性や利便性が格段に上がることは、「DiXiM BD Burner 2013」を実際に使ってみれば誰でもすぐにわかるだろう。単に複数の番組をマウスでひょいひょいと選ぶだけ、ネットワーク経由で複数の機器から録画した番組を移動できるだけ──たったそれだけのことなのに、どうしてこの操作性がいまのAV機器で実現できないのかと愕然としてしまう。
「nasne」を使っている人ばかりでなく、DTCP-IPのダウンロード型ムーブに対応している機器を使用している人なら、ぜひとも使ってみてほしい。普段使っているAV機器がどれだけ不便なものであるかを痛感させられるはずだ。
(天野 司)