「小説を書く」という一点に機能を絞り込んだ、ユニークな文書作成ソフト。機能的にはテキストエディタの範疇に含まれるが、ピュアテキストファイルの編集はできないし、半角/全角変換などの文字種変換、行あたりの文字数指定や折り返し設定、行番号の表示といった、テキストエディタでは一般的な機能もバッサリ切り捨てられている。代わって取り入れられたのが、登場人物やアイテムの管理機能。場面管理は、タグジャンプ機能と考えるとわかりやすい。ショートショートはともかく、ある程度まとまった長さの作品を書いていると、途中で登場人物の性格が微妙に変わったり、矛盾する描写が出てきたりしがちなものだが、「ArtOfWords」では、検索機能を駆使して、台詞やアイテムの登場場面を遡ることで、ストーリー上の整合性を簡単にチェックできるようになっている。単に文字列を順次検索してゆくのとは異なり、抽出結果をリストに表示し、マッチした文字列に続く文もある程度表示されるので、会話の流れを追いながらチェックできる。一般的なテキストエディタやワープロには真似のできない芸当だろう。
「展開(場面管理)」機能は、プロットのメモとしても利用できそうだ。重要なシーンのアイデアやイメージだけを先に場面として登録しておけば、そのリスト(ボタン)を見ながら執筆できるので、伏線を張ったり、ちょっとしたエピソードを入れたりといった作業を助けてくれるだろう。もちろん、その部分を書きはじめた時点でマーキングしておけば、あとから参照するのに役立つ。
少し欲をいうと、展開のボタン一覧が表示されているときに、マーク位置へのジャンプだけでなく、シーンの説明や人物、アイテムの設定などを参照できたりすると、もっと便利なのではないかと思う。
機能が特殊なため、使いこなしにはそれなりの慣れが必要だが、ストーリー形式での解説が表示されるようになっているので、読みながら操作してゆけば、自然にマスターできるはずだ。
(福住 護)