居酒屋という閉鎖された空間で、何度も世界の崩壊を繰り返しながら真相にたどり着くビジュアルノベルゲーム。大学の文芸サークルの飲み会が世界の崩壊へと続く
「星と雨とが交わる飲み屋」は、複数の主人公の視点で綴られる、ノベルタイプのミステリーアドベンチャーゲーム。選択肢は存在せず、プレイヤーはシナリオを読み進めながら、“事件”の真相を推理してゆく。
ゲームの舞台は、ゲームタイトルと同じ名前の居酒屋「星と雨とが交わる飲み屋」。この店に、とある大学の文芸サークルに所属する若者が集まる。主要登場人物は、
- 少々世間知らずな年下の青年「雨宮」
- ライトノベルが好きな体育会系の男性「法月」
- 常に周囲の目を気にしているお人好しの女性「日笠」
- 他人と群れないマイペースな女性「築地」
- 雨宮が憧れるクールな男性「星野」
の5人。ストーリーは主に5人の視点で語られる。物語は、星野を除く4人の飲み会からはじまる。「欲望の三角形」「マクガフィン」「哲学的ゾンビ」といった単語が飛び交いながら会話が重ねられるうち、「法月」と「日笠」が付き合っていたり、「雨宮」が「星野」に好意を寄せていたり、「日笠」が「築地」に対して思いも寄らない感情を抱いていたり、「星野」が過去に深い心の傷を負っていたりと、さまざまな事実が明らかになり、複雑な人間関係が浮かんでくる。「星野」が遅れて合流したところから、物語は怒濤の展開を見せる──予期せぬ殺人事件。最終的には地震が起こり、キャラクタが死を迎えてエンディングとなる。世界の崩壊を何度も繰り返し、複数の視点から見つめてゆくことで、徐々に物語の真相が明らかになってくる。
ノベルゲームとしてのシステムを完備した親切設計
ゲームシステムは「吉里吉里」を使用したオーソドックスなもの。画面右下に表示されるメニューから「セーブ」「ロード」「バックログ」「設定」「物語選択」を行うことができる。ウィンドウの切り替えやメッセージ表示速度の調整、BGM/SEの音量変更などは設定画面で行うことが可能。文章のスキップも軽く、テキストログもすぐに見ることができる。ノベルゲームを遊ぶために必要な機能はすべて揃い、プレイ中にストレスを感じることはない。
特徴的なのは、各エピソードを特定の時刻から読みはじめられること。物語は20時から4時間にわたって展開されるが、20時、20時20分、21時10分、22時50分、23時15分、23時40分で区切られ、好みの時刻からはじめることができる。例えば、「日笠」シナリオの「22時50分」から読むといったことが可能。「築地」のエピソードを読んでいるときに「『日笠』は何を考えていたか」などと思う場面がよくあり、そうした場合に役立つ。「『雨宮』のエピソードと『星野』のエピソードとで、どの点が異なるか」を確認したりすることも可能だ。