勇者が魔王を倒す衝撃的なシーンからはじまる「ロートヘルトの終止符」最大の魅力は、その設定にある。「王国が発達しすぎないために魔王が存在し、魔王が人類を滅ぼそうとすると勇者が現れる」という世界のシステムは、既存のRPGに対する皮肉にも取れる。「仲間とともに魔王を倒したはずの勇者が、今度は同じ仲間を引きつれて、王国を相手に戦う」という展開も新鮮で、独自のアイデアが光る。各キャラクタの性格もユニークだ。主人公のユーシアは昔、勇者を演じていたものの、現在はただの皮肉屋のお兄ちゃん。世話焼きのリースに尻を叩かれながら旅をする姿に、かつての勇者の面影はない。しかし、ユーシアのミストへの思いは深く、ゲーム中に挿入されるミストとの過去のエピソードは、なかなかおもしろかったし、彼らの間にどんなことがあったのか、強く興味をひかれた。
かつての仲間たちも個性揃いだ。特に魔法使いの「ザード」は関西弁使いでお調子者の上、シスコンという意外なキャラクタ。シリアスな中にも、彼らのやり取りは微笑ましく感じられ、ストーリーを進める上でもよいアクセントになった。設定や物語に目が行きがちだが、キャラクタのやり取りひとつとっても、よく作り込まれていると感じた。
戦闘システムは、属性や職業など、複雑な要素が絡み合っているように思えるが、実際にプレイしてみると、とにかく爽快だ。余分なレベル上げも必要なく、序盤からどんどん飛ばしていける。こだわりたい人はこだわれるし、戦闘はあまり考えずにガンガン行きたいという人も楽しめる。バランスのよい設計だ。
物語にも注目してほしい。「勇者が強大な敵に立ち向かうため、仲間とともに冒険する」という一見スタンダードな物語だが、実はおもしろい要素やアイデアがぎっしり詰め込まれ、よくできたRPGに仕上がっている。徐々に謎が解かれてゆく展開に先が気になる、止め時がなかなか見つけられなかったほどだ。シナリオ、設定、キャラクタ、戦闘システム、すべてにおいて高いクォリティで、ボリュームもたっぷり。RPGが好きな人にぜひプレイしほしい。
(早川 陽子)