九龍の黒社会を舞台にした、ハードボイルドな“香港ノワール系同人ノベルゲーム”。ある事件が三人の視点で描かれる。無関係に見えた二つの出来事が交差し、やがてひとつの物語へと
「紅蜘蛛外伝:暗戦」は、香港ノワールの世界観で展開されるノベルゲーム「紅蜘蛛 / Red Spider」シリーズの短編外伝。第一作目「紅蜘蛛 / Red Spider」の三年前、第二作目「紅蜘蛛2 / Red Spider2」の四年後に起こったある事件が「來」「永孝」「越児」の三人の視点で描かれる。香港ノワールの世界観を“映画を観るような感覚”で楽しむことができる。
舞台は香港。物語の要となる人物は、香港の暗殺組織「蜘蛛网(ウェッブ)」の元一員で、シリーズ全体を通してのヒロイン「越児(ユェ)」。香港に戻って探偵事務所を開いていた元刑事「來(ライ)」のもとを越児が訪れたところからストーリーははじまる。四年ぶりの旧交を温める二人。やがて話題は來の事務所に最近訪れた依頼人のことへと移り、來は越児からいろいろとアドバイスをもらう。
そんな折、九龍灣の路地裏で「恩恩(ヤンヤン)」という女性モデルが殺害され、恩恩の恋人でバーレスクダンサーの「K豹(パンサー)」が容疑者として逮捕される。K豹の弁護を担当することになった弁護士「永孝(ヨンシャオ)」は、恋人でもあり、裏社会に通じた越児に事件にまつわる調査を依頼する。
やがて、この一見無関係に見えた二つの出来事は交差し、ひとつの物語へと繋がってゆく……。
一本道のノベルゲーム。ヒロインを含めた三人の視点から事件が描かれる
恩恩が殺され、K豹が所属するショウクラブ「NASA」の店長「老板(ラオバン)」が九龍地区一帯で活動する黒社会組織「紅花会」の会長「楊坤(クヮン)」のもとに相談にやって来たところまでがプロローグとして描かれる。以降は「來編」「永孝編」「越児編」に分かれ、三人それぞれの視点でストーリーが描かれてゆく。
「來編」では、來が探偵事務所にやってきた元プロボクサーの依頼人「風喜(フォンヘイ)」からの依頼をもとに調査を行う。依頼内容は「元妻『子欣(ズーシン)』の行方を捜し、風喜の代わりにお金を返してほしい」というもの。子欣の現在の交際相手「羅兆龍(シウロン)」の調査を開始した來は、ひょんなことから越児と鉢合わせし、互いの調査に協力し合うことになる。
シリーズ第一作に登場するキャラの三年前の姿を知ることができる、ファンにはうれしい作品
「永孝編」では、永孝が父の楊坤からの依頼で、K豹の弁護のために調査に乗り出す。K豹によると、どうやらこの事件は警察絡みらしい。急遽、越児に協力を依頼する永孝。調査を進めるうちに、K豹の同僚でバーレスクダンサーの「サニー」の証言に奇妙な点があることに気づく。さらに越児のアドバイスにしたがって検視記録を当たった永孝は、警察内部で証拠の改竄が行われていることを知る。
「越児編」では、「來編」「永孝編」では描かれなかった事件に関する裏話や顛末、越児に関するちょっとした裏話などを知ることができる。越児は、永孝から依頼された恩恩の出席したパーティを調べるうちに、パーティの参加者の「以ムイ(イームイ)」という女性を紹介され、話を聞く。そして以ムイの情報からパーティの主催者および紅花会をめぐる大きな陰謀が進行していることに気づき、調査を進めるとともに、二度と以ムイたちのような被害者が出ないよう報復を誓う。