「Zimo」は、Windows用の電卓ソフトだが、ご存知のようにWindowsは「電卓」を標準で搭載する。その歴史は長く、なんと1986年に登場したWindows 1.0以来、すべてのバージョンに搭載されている。さらにWindows 10の「電卓」は、極めて高機能化されており、通常の電卓のほか、関数電卓、プログラマ電卓、日付計算、単位変換など、豊富な機能が揃っている。それなのになぜ、あえてほかの電卓ソフトを使うのか?
大きな理由のひとつが「使用効率が使用者の慣れに大きく左右される」という電卓ならではの特性にあるのではないだろうか。算盤と同じく電卓にも「段位」があることからもわかるように、極限まで熟練したユーザは、まさに体の一部であるかのように電卓を使いこなす。そこまで熟練していなくても、現実の卓上電卓と動作の違いがあれば、「使いものにならない」と判断される方もいらっしゃるだろう。
例えば、「Zimo」に用意された「SHARP(シャープ)式電卓」「CASIO(カシオ)式電卓」の切り替え設定。シャープ製/カシオ製電卓の特殊キーには、素人ではそれほど意識しないような、動作のわずかな違いがあるのだそうだ。その動作をシミュレートする切り替え設定には「実際の電卓を使用するユーザを、違和感を感じさせることなく取り込もう」という意思が感じられる。
キーボードから機能を利用できるのは当然として、(数字以外の)すべてのボタンのキー割り当てをカスタマイズできるのも「慣れ」による効率を高めるために重要だ。たとえ機能の数で優れていようとも、手になじむ使い心地がなければ使われることはない。「プロの道具」とはそうしたものだという心意気を感じさせるソフトだ。
(天野 司)