主人公の妄想通りに展開してゆくゲーム内の世界と、それに比べて惨めな現実の世界とが交互に描かれる、良作のアドベンチャー。ゲームシステムはノベルゲーム寄りで、途中数ヵ所で表示される二択または三択の選択肢で分岐し、その後の展開やエンディングが変わってくるというシンプルな方式だ。全6ルート(そのうちのひとつは即BAD)で、1ルートあたり30分程度と気軽にプレイできるコンパクトなゲームだが、登場する少女が個性的かつ魅力的で、物語のアイデアや展開がよく考えられているため、非常に楽しくプレイできた。
ゲーム内の世界が現実世界と微妙にリンクしていたり、すべてのルートをプレイすると、その理由がしっかりと説明されていたりする点も高く評価したい。一見イロモノのように思わせながら、その実は“正統派”のゲームだ。
必要な要素はきちんと押さえられているため、大きな不満はないが、逆に「あまりにも無駄なく、コンパクトにまとまりすぎている」点が不満といえば不満かもしれない。ダラダラと長すぎるのは論外だが、各ヒロインにもう1エピソードか2エピソードほどが付け加わえられた、1.5倍か2倍程度のボリュームのゲームとしてプレイしてみたかった。
(秋山 俊)