テキスト読み上げ・音声合成ソフトというと、例えば視覚障碍者向けの支援ソフトであったり、「ボイスアナンシェータ」と呼ばれる音声通知機能付きのソフトであったり、あるいは財務計算用の音声読み上げであったりなど、どちらかといえば“お堅い”用途向けに使われることが多い。いってみれば実用的だということ。「Megpoid Talk」は、画面を見てもわかるように、そうしたお堅いイメージからは大きく外れた、このジャンルの中ではめずらしい存在だ。ソフトのデザイン、使い勝手、アニメーション、非言語音入力、そして「VOCALOID」向けデータの出力など、パーソナルユースをメインターゲットに見据えている。
しかし、パーソナル向きだからといって、実用向きのソフトと比べて機能が劣るということはない。それどころか、凝った設定を行える分だけ、実用ソフトと比較してもポテンシャルは高いのではないだろうか。とりわけ、ピッチエディット画面における各音素のピッチ編集機能や発音長さ編集機能、さらにマイク入力からの旋律抽出機能に至っては、他に類を見ない高度なもの。これだけ細かな設定が行えるなら──うまく使えば──音声合成であることを気にさせないほど自然な発声ができるようになる。
合成元となっている音声が「声のプロ」である本職の声優である点にも注目したい。もちろん「VOCALOID」などでも声優が起用されている例はあるが、歌唱と違って、自然言語による音声合成の場合、本当に「元の声優」の声の違いが感じられる。テレビ番組などで中島愛さんの声を聴いたことがある人であれば、まさにその中島さんの声であることをはっきり感じ取れるはずだ。
(天野 司)