切なくて、心温まる短編サウンドノベル。非常口のピクトグラムに恋する主人公の気持ちが丁寧に描かれている。「私」は、ピクトグラムの姿をした、素朴で穏やかそうな男性に心惹かれる
「非常口さんと恋する女の子」は──設定こそ不条理だが──女の子の恋する気持ちが丁寧に描かれた、ハートウォームな短編サウンドノベル。恋は無事、実るのだろうか……。
主人公兼語り部は、一人称「私」の女の子(名前は不明)。基本的に雑用を行うアルバイトとして、とある会社で働いていたが、偶然会議で隣に座っていた男の人に心を惹かれてしまう。
最初は接点もなく、遠くから気になる人として目で追っているだけだったが、業務で男性の補佐をするようになってからは、誠実な人柄にさらに好感を抱くようになっていった。そして、とある出来事をきっかけに、完全に恋に落ちてしまう。
男性の名前は「非常口 進(ひじょうぐち・すすむ)」。非常口に描かれたピクトグラムそのもの。……といっても「私」の妄想の産物ではなく、この世界では立派な実在の人物だ。
そんな彼のそばに、とてもお似合いなピクトグラムの女性が現れ、半ばパニックを起こす「私」。恋の顛末はどうなるのだろうか……。
「非常口」さんとお似合いのピクトグラムの女性「御手洗」さん
物語の主な登場人物は「私」も含めて四人。主人公の「私」は、名前も姿形も最後まで不明。アルバイトだが、常に“プロ”として仕事に取り組むことを心掛け、「誰かの役に立つこと」を意識して、どんな些細な仕事でも全力を尽くすことがモットー。手フェチのきらいがあり、「非常口」さんを気に掛けるようになった最初のきっかけは、彼の手だった。
「非常口」さんは、緑色の人型ピクトグラム。足が長くてスラッとした、丸みを帯びて柔らかそうな体つき。顔も「私」好みの素朴な雰囲気。穏やかそうなのに、いまにも走り出しそうな、きびきびした動きも好ましい。
「槇(まき)」さんは、クールビューティな雰囲気の「私」の先輩。飾り気のない、ハッキリした言葉でズバズバと物を言うが、面倒見がよく、「私」は頼りにしている。
「御手洗(みたらい)」さんは、赤い女性型のピクトグラム。「非常口」さんとは非常にお似合いで、二人が並んでいる姿を見ると、「私」は気が気ではなくなってしまう。