パソコンの中にあたかも別のパソコンが存在しているかのような環境をソフトウェアで作り出し、OSやアプリケーションを動作させるのが「仮想マシン」と呼ばれる機能だ。ハードウェア性能の向上により、ひと昔前であれば夢物語だったものが、いまではごくあたりまえのように利用できるようになった。例えば「Windows 7 Professional」に搭載された「XPモード」も、Windows 7上でWindows XPを動作させる仮想マシンの一例だ。仮想マシンであっても、OSをインストールするにはディスクが必要だ。通常、仮想マシンのOSは「仮想ハードディスク」と呼ばれるファイルにインストールされる。仮想ハードディスクは、仮想マシン側から見るとハードディスクに見えるが、単なるデータファイルにすぎない。要するに、ディスクイメージをそのままファイル化したものと考えればよい。
しかし「ディスクイメージをそのままファイル化する」機能は、「EaseUS Todo Backup Workstation」のようなバックアップソフトであれば、もともと持っていたもの。つまり「EaseUS Todo Backup Workstation」のディスクイメージファイルならば、「ちょっとフォーマットを変更してやるだけで、そのまま仮想マシンで使える仮想ディスクファイルになるはず」というのが今回搭載された新機能「P2Vコピー」や「P2V変換」につながっている。
この機能を使えば、物理ハードウェア上で動作するOSをそのまま仮想ディスク化できる。言い換えれば、物理コンピュータ上で動作している環境をそのまま仮想マシンの中に持ち込めるということを意味する。こうしたP2V機能は、仮想化ソフトの一部で対応している例があるが、前述のように「ディスクを丸ごとイメージ化する」機能であれば、バックアップソフトの側に一日の長がある。バックアップソフトである「EaseUS Todo Backup Workstation」にこうした機能が搭載されたのも、ある意味で当然といえるかもしれない。
だが、この機能の搭載により、バックアップソフトは確実に新たなステージに立った。なにしろ「バックアップ」されたデータは、単にデータを保存し、取り出せるだけではなく、それ自身を「マシンとして動作させる」ことが可能になったのだ。つまり、データではなく、「機能そのもの」を保存できるようになった。まさにバックアップソフトの新たな進化だ。
(天野 司)