宮沢賢治の傑作短編「グスコーブドリの伝記」のストーリーと世界観をできる限り忠実に再現した、ユニークなアドベンチャーゲーム。挿入されるミニゲームをクリアしながら、名作文学を楽しめる。宮沢賢治の小説世界を忠実に再現
「グスコーブドリの伝記」は、宮沢賢治が書いた同名の小説をもとに作成された短編アドベンチャー。ちょっとしたミニゲームを挟みながら、主人公の行動を追体験できるようになっている。
ゲームの主人公は「グスコーブドリ」という名の少年(略してブドリ)。イーハトーブの大きな森の中で生まれ、三歳年下の妹「ネリ」とともに、森を遊び場として幸せにすくすくと育っていた。父親は「グスコーナドリ」といい、あたりでは名高い木こりだった。
ところが、ブドリが10歳になった年にはじまった冷害で、事態は一変する。二年続きの冷害による飢饉の中、両親は二人の子どもを残して姿をくらませてしまう。さらに、妹のネリは籠を背負った正体不明の男に連れ去られ、ブドリは森の外れまで男を追いかけたものの、力尽きて倒れてしまう。
こうして家族をすべて失い、てぐす飼いの男が森を買い取ったことで、家すらも失ってしまったブドリ。そんなブドリが苦労の末に出世し、短い生涯を終えるまでが、原作通りに描かれる。
小説では不可能な、町や村の人々との会話を楽しみながら、物語を進めよう
操作はキーボードで行う。カーソルキーで上下左右にブドリを移動させ、決定キー(【C】/【Enter】/スペース)で目の前の物を調べたり、話したりする。キャンセルキー(【X】/【Esc】)では、メニューを開いて持ち物を調べたり、使ったり、データをセーブしたりすることが可能だ。
「小説の内容をゲーム化する」というコンセプトのため、アイテムなどはごく一部を除いて登場しない。ゲームでは、主人公の移動やほかの登場人物との会話、物を調べたり、読んだりするといった操作が中心となる。特にほかの登場人物との会話は、ゲームをプレイする上での大きな楽しみのひとつ。ゲームの進行に関係なくても、漏らすことなく、まめに行いたい。
ストーリーに沿って挿入されるミニゲームがアクセントに
ストーリーと関連したミニゲームも用意されている。ただし、あくまでもストーリーを楽しんで進めることが中心。ゲームをクリアできなかったり、ミスでペナルティが与えられたりといったことはない。最もシビアな条件のゲームの場合でも、ミスをした場所から何度でも再チャレンジすることが可能。多くのゲームでは、数回チャレンジしてもクリアできなかった場合には、スキップすることもできる。
ミニゲームの内容はバラエティに富んでいる。特に前半のゲームは、カーソルキーで主人公をすばやく、正確に操作しなくてはならないものが多く、刺激的でおもしろい。前半のゲームが気に入り、もっとやり込みたい場合には、後半の特定の場所でゲームを指定することで、より難易度の高いバージョンにチャレンジすることも可能。後半のゲームは、スキップができない代わり、正確な操作や反射神経は必要ない。