2003年は、シリコンオーディオプレイヤーやポータブルCDプレイヤーに加えて、小型ハードディスク搭載の機種も多数登場してきた。価格もこなれてきており、選択の幅が広がって、非常に悩ましい一年となった。また、音楽ファイルを記録したCDを再生できるカーオーディオやカーナビも、一般的になってきた。各種のプレイヤーを活用するために、音楽ファイルを用意する必要があるが、容量がどんどん増えているので、大量のファイルを高速に、一括して処理できることが望ましい。パソコンで再生するのとは違って、タグやファイル名の表示、対応フォーマットやビットレートなど、さまざまな制限もある。「Rip!AudiCO」は、音楽ファイルの形式変換やタグ編集を行うユーティリティだ。OggVorbis/WAV/WMA8/MP3/MP3 PROの各フォーマットを相互に変換することができる。もちろん、音楽CDのデータをファイル化することも可能だ。曲ファイルのタグ情報を編集する機能も備えている。同様の機能は、他のソフトや、プレイヤーに付属しているソフトも持っているが、筆者が「ベストオンラインソフト」に「Rip!AudiCO」を挙げた理由は、別のところにある。
第一の理由が「ビットレート変換機能」だ。雑誌付録やソフトのおまけにMP3ファイルが入っていることが多く、インターネットでも著作権的に問題のない曲が公開されているが、曲のビットレートが自分の環境に合わないことが少なからずあるのだ。ちなみに、筆者のハードディスクナビは128kbpsまでの対応だ。ビットレートを落として、容量があまり大きくないプレイヤーでも多くの曲を聞きたいという要望もあるだろう。
ビットレート変換機能を使うと、好きなビットレートにファイルを再変換してくれる。複数ファイルの指定やフォルダ単位での一括変換にも対応しているので、聞きたい曲をまとめて変換することが可能だ。筆者は、この機能で一気に変換を行ってからCD-Rに焼いて車内で聞くという使い方をしているが、これがとても便利なのだ。
第二に、変換時の「音量のノーマライズ処理」オプションがある。CDによって音量がまちまちなケースはめずらしくなく、同じCDでも歌とトークでまるで違っていることがある。ノーマライズオプションは、CDやファイルの変換時に最大音量を一定に揃え、常に同じボリュームで聞けるようにしてくれる。再生時にいちいち音量を調整するのは面倒なだけでなく、カーオーディオの場合はコンソール操作をともなうため、危険でもある。安全面にも有効な機能だと思うのだが。
第三に、ファイル名やタグ情報を、指定した形式に自動で変換してくれる点。最近は減ってきたが、日本語表示に対応していないプレイヤーもある。「CDDB」対応のソフトを使っても、取り込んだ漢字や仮名をローマ字やカタカナに直さなくてはならず、苦労している方も多いと思う。「Rip!AudiCO」では、CDDBから取得したデータやファイルに記録されている情報を、一括してローマ字やカタカナに変換できる。該当するユーザにとっては、涙が出るほどありがたいはずだ。
そのほか、ファイル名に通し番号を付けたり、フォーマット変換時に品質を細かく指定できたりと、音楽ファイルに関するほとんどの機能を備えているので、ヘビーユーザにもお勧めできる。それでいて、設定や操作は簡単でわかりやすい。「わかば」という、ファイルやフォルダをドラッグ&ドロップするだけで変換してくれる補助機能も持っているなど、初心者にも配慮しているのがうれしい。
「Rip!AudiCO」は、筆者の音楽ライフを見事に変えてくれた。いまや欠かせない存在となっている。シェアウェアだが、14日間の試用期間が設けられている。登録ファイル数に制限があるものの、すべての機能を利用することが可能だ。また、同時処理アイテム数が五つに制限されているフリー版も用意されている。ひとつでも気になった機能がある方や、興味を持った方は、ぜひ試していただきたい。すぐによさを実感できるはずだ。