HDR(ハイダイナミックレンジ)は、通常の写真画像では暗すぎて真っ黒になってしまう部分や、明るすぎて白飛びしてしまう部分を補正する、写真画像処理のひとつだ。通常、明暗差が大きな場面では、人間の目は「どこを注視しているか」で明るさを自動的に補正する。例えば、暗い部屋の中から窓の外を見る場合には、無意識に屋外の明るさに目を合わせるし、室内を見る場合には室内の明るさに目を合わせる。
一方、写真撮影の場合はそうはいかない。ひとつの画面内に写り込むものすべてに明るさを合わせることはできないため、このような場面では、屋外(明るい)/屋内(暗い)のいずれかに露出を合わせるか、あるいはどちらも中途半端な明るさで写ってしまう。
この問題を解消するのがHDR機能だ。一般的にアンダー、適正、オーバーといった具合に3種類の露出で撮影された画像を組み合わせ、それぞれの中から最適な露出になった部分のみを組み合わせて1枚の写真を合成する。同じ構図で撮影された複数枚の写真が必要となるのはそのためだ。
カメラメーカーによって異なる呼び方をする場合もあるが、「AEB」あるいは「自動段階露出」機能があるカメラの場合は、「露出をずらした複数枚の写真」を用意することは簡単だ。しかし、そうした機能がない場合や、あるいはそもそもHDRを利用することを考えていなかった撮影の場合、HDR機能は使えない。これが従来のHDRにおける最大の欠点だった。
「Photo ReColor」では、この「複数の同じ構図の写真が必要」というHDR機能の制限を撤廃し、たった1枚の写真だけでHDRの適用を可能にする。なにしろ、これまで最大の障害であった制限を解消するだけに、この効果は非常に大きい。
HDR以外の機能も充実しているが、HDR機能だけでも「Photo ReColor」を利用する大きな理由となることは間違いない。使いやすく機能性も高い、お勧めのレタッチソフトだ。
(天野 司)