ソフトを開発しようと思った動機、背景
僕は絵をデジタルではなくて、100%アナログで描いています。日本画、油彩画、アクリル画と、カンバスに絵具と筆で描いています。作品のすべてはアナログによる作品です。パソコンのペンタブレットを持っていますが、まったく使わず、埃を被っていました。最近では指でタッチして操作するスマートフォンやスレートPCなどが普及しています。僕は「そのような機器で何がしたいか? 何ができたら自分はうれしいか?」を考え続けました。やはり僕は「絵が描けたらいいなぁ」と思いました。
絵を描くペイントのソフトウェアは以前より開発を続けていましたが、開発は進んではいませんでした。携帯電話で絵を描くという携帯電話用のソフトウェアも開発を続けていて、アイデアを温めていましたが、進んではいませんでした。
スマートフォンが登場して、スマートフォン用のペイントソフトを作り上げた時点で、パソコン用のペイントソフトも開発が進み、現在の形になりました。より現実的で、でもいままでとは違う画風や画面が作れるものを考えて作りました。パソコンで使える新しい画材を作るようなイメージです。
透明度をレイヤごとにだけではなくて、点や線一本ごとに透明度を加えて描けるペイントソフトを目指しました。線や点が透明になることによって、より現実の画材に近くなりました。鉛筆やコンテ、水彩絵具や油絵具、アクリル絵具に似た、でも現実とは違う画材の画風ができました。
これをレイヤで分けたら何千、何万という膨大なレイヤ数になってしまうことになります。それをひとつのレイヤで透明度によって色を重ねることができるというアイデアは、ペンタブレットで絵を描こうかなという気持ちを起させてくれるものでした。レイヤごとに透明度を設定できるのも、よい作品を作るのによい方法なので、レイヤの機能も作りました。このソフトを使ってくれた人から「絵を描くのが楽しい」と言われたときにはうれしかったです。
開発中に苦労した点
透明度を再現するために独自の描画エンジンを作りましたが、その処理速度を実用のレベルに高速化するのに苦労しました。また、ペンタブレットやスレートPCのマルチタッチなどのハードウェアに動的に対応することに苦労しました。ハードウェアがなくても、現在あるハードウェアを自動で認識して、あるものだけで絵が描けるようにするのが大変だったです。
ペンタブレットやタッチパネルがなくても、マウスがあれば絵が描けます。キーボードだけで絵を描くというソフトも開発していましたが、それにはプログラミングのモチベーションが上がりませんでした。おもしろいアイデアだったのですが、プログラミングは進みませんでした。
ユーザにお勧めする使い方
透明度を高くした色と線で幾重にも重ねて描くことによって、現実の鉛筆で描いたような風合いや、水彩絵具で描いたような風合いにもなります。設定によって無数に変化するので、いろいろと試したり、実験したりすることができると思います。何より絵を描くことを楽しんでもらえたらうれしいです。
今後のバージョンアップ予定
アイデアはたくさんあるので、それを実現しようと考えています。ただ、シンプルなソフトウェアの構成は守りたいので、実現したい機能と抑える機能とがあると思います。機能をドンドンと追加していくバージョンも作ろうと思っていますが、要望などがあれば、聞かせてもらえると参考になります。また、いろいろなハードウェアがあるので、それらに対応して、その特徴を生かした独特な機能を開発しようと考えています。
「このペイントソフトを使って絵を描いてもらったら、楽しい」という感想をいただきました。今後もより絵を描くことを楽しめるようなソフトウェアにするために、機能を追加していきたいと思っています。同時にこのペイントソフトと絵のサポートサイトを充実させていこうと思っています。ホームページも絵を楽しめるギャラリーなども作りたいと思っています。
(高橋 雅乃)