「Snap Note」を使うと、学習やデスクワークが進化します──学習は頭の中で復唱して覚えることではなく、図解を作成することに変わります。資料をインプットし、図解を納得する形でアウトプットすると、情報が何度も脳内を通り抜けて記憶されます。ツリー構造やハイパーリンクを使い、関連情報を体系的に整理すると、脳内のシナプスが接続されます。こうして「自分で描いた図解」が学習の成果になります。自分で描いた図解は、描いた人の前提知識に合わせた説明になっているので、インターネットにある膨大な資料よりもわかりやすく整理されています。そして、検索してすぐに要件を満たすことができるのであれば、詳細を覚えていなくても、あなたの能力と見なしてよいのです。「Snap Note」は、2001年から開発をはじめました。白い紙を用意して自由にキーワードや線を描き、考えを整理したりすることがあると思いますが、それをパソコンでできたらよいなと考えたのがきっかけです。
Ver.1は、「SVG Cats」という名前でしたが、これは、当時のブラウザのベクターグラフィックスの標準がSVG(Scalable Vector Graphics)になると予想されていたため、プログラムネイティブのファイル形式をSVGにしたことに由来しています。 ちなみに「Cats」は「Computer Aided Typification Scribbler」の略でした。その「SVG」ですが、IEがいつまでたってもプラグインのインストールが必要なままなので、仕方なくIEでネイティブ対応しているVML(Vector Markup Language)に変換する機能をVer.2で加えました。「Snap Note」に添付されている図解・説明書は、IEで見えるVML形式になっています。
Ver.2では、インラインテキストエディタ、手書き、複数ページ、ハイパーテキスト、画面キャプチャを開発して、シェアウェア化しました。画面キャプチャと図形作成ツールの組み合わせは強力で、初心者向けのパソコン解説書のような図解をすぐに描けます。PDFなどのファイルから、重要な部分をプレビューとして切り取れば、わかりやすい資料の一覧になります。ちなみに「Snap Note」の「Snap」は、このキャプチャ機能から来ています。同じ時期にマイクロソフトから「Microsoft Office OneNote」が発売され、キャプチャ機能があることを知って、「この分野もマイクロソフト製品に独占されてしまうのか」とヒヤヒヤしていました。
Ver.3では、パーソナルサーチ、ノートバー、プログラミング補助機能を開発し、フリーソフト版とシェアウェア版に分けました。フリーソフト版は、最大追加ページ数などの制限がありますが、主要な機能はシェアウェア版と同じく使えます。インターネットでは検索があたりまえですが、パソコンに入っているファイルを的確に検索できるソフトウェアは現れていません。Google デスクトップやWindows デスクトップ サーチを試しましたが、「あの文書をすぐに見たい」と思っても、検索候補から少し探さないと見つかりませんし、SVGファイル内の目的のページにジャンプすることができません。そこで、タイトルとタグを使ったパーソナルサーチ機能を開発しました。タグを使った検索は精度が高いので、ハイパーリンクと組み合わせれば、コマンドライン型ランチャとしても使えます。ハイパーリンクの横にコマンドの説明を添えると便利です。ノートバー機能を使えば、画面の端に「Snap Note」が開き、一時的なメモやランチャとして使えます。
プログラミング補助機能は、ドキュメントとして「Snap Note」で作成した構造図などから、テキストファイルに記述された任意のキーワードがある行にジャンプします。ソースコードブラウザや、ソースコードから自動生成されたHTMLでは得られない、快適なブラウジングをコーディングの最中から行えます。ソースが添付されている、WindowsのVBScript(WSH)で使えるライブラリ「vbslib」や、ソースコードのエコサイクルを構築する「Module Mixer」には、「Snap Note」用のSVGファイルが付いていますので、ソースへのジャンプをお試しいただけます。
今後はまず、シェアウェア版「Snap Note 3」を完成させなければなりませんが、その後は、曲線やオートシェイプのような任意の図形、アンチエイリアシング、Unicode文字、スケジュール通知、テキストの右端での折り返し、マルチ書式テキスト、ハイパーリンク修復、スタートメニュー検索への転送、ホームページのキャプチャ、タブ化などを考えています。余談ですが、Windows 7の目玉であるタスクバーのアイコンに対するマウス操作が、「SVG Cats 2」の通知領域アイコンとまったく同じ操作体系だったことに驚いています(特許を取っていたら、いまごろ……?)。
(戸田 匡紀)