フレキシブルな表示方法と手軽な使い勝手を両立させたバランスのよさが際立つ世界地図ソフト。地図のスタイルは、地球の姿勢(見る向き)、投影する光源の位置、投影面の形状(平面/円筒/円錐)などの条件から決まる。“緯線を平行に描く”“面積を正確に表現する”“世界全体を1枚で見渡す”などの目的によって、これらの条件を組み合わせる必要があるのだが、専門知識がない人にはなかなか難しい。
「地図を見られればよい」という初心者向けのクルーズ機能をはじめ、正確にしたい要素を指定することで最適な図法で描画できる「投影変換」など、難しい設定を極力省いて、直感的に使えることが「MERCATOR」の強みだ。また、複数の地図データを“重ねて”読み込んだ上で、アクティブ地図を切り替えることにより、同じ範囲を「行政(詳細な地名入り)」「地形図(等高線入り)」を切り替えながら見ることもできる。
地図表示を任意にアレンジできるのもおもしろい。例えば、地名の「フォントや色、国境線や湖などの「色」を設定したり、経線・緯線では、表示間隔の設定、「経度」「緯度」の画面表示を行えるほか、陸地を避けて海洋のみに表示するといったことも可能だ。
詳細なデータを含みながら、表示速度は非常にスムーズ。例えば、地図上の位置を移動するときなどにも、描画はほぼ瞬時に完了する。
ヘルプドキュメントには、「球形」である地球の表面を「平面」に描くための投影法の基本から、方位の考え方、経度・緯度により決定する地球の座標、各々の図法による地図の特徴や使い方まで、非常に詳細な解説がある。地図および地理学について、基礎から勉強することもできる。
なお、行政図または地形図と重ねて表示するためのオプション地図として、海の部分を等深線で塗り分けた「海底地形図」、道路・鉄道・空港を配した「交通図」がある(作成中のものもあり、作者のホームページで順次公開される予定)。
(坂下 凡平)