東アジア各地域の支配国(団体)を時系列に沿ってアニメーションで示す歴史学習ソフト。西暦1年から現在まで、約2,000年の歴史を遡ることができる。「歴史地図2000」は、中国大陸や韓半島(朝鮮半島)などの日本周辺の情勢を学習できる歴史ソフト。各地域がどの国/団体によって支配されていたかを、時の流れにしたがってアニメーションで表示する。日本では弥生時代にあたる「西暦1年」から現代にいたるまで、2,000年にわたる東アジアの変遷がひと目でわかる。
操作方法はいたってシンプル。起動直後は時代が西暦1年にセットされており、ウィンドウ下部の操作パネルにある「再生」ボタンを押すと少しずつ時代が進む。地域を支配している国や団体が替わると、地図の色分けも変化する。アニメーションは一時停止や逆再生が可能。年代のバーにある矢印をドラッグすることで、特定の年代にすばやく切り替えることもできる。「BGM」と「国名/団体名表示」のON/OFF切り替え用ボタンもある。
地図自体は、各団体の色分けがうまくなされていて非常に見やすい。中国大陸では相当な数の国が興亡して複雑な動きをするにもかかわらず、それを丁寧に表現している。もとのデータがFlashで作成されているので、ウィンドウの拡大/縮小も思いのまま。画面が小さく見づらい場合は、全画面で再生することもできる。
「歴史地図2000」における最大のメリットは、各地域の歴史を“横断”して見られるところにある。歴史を学習する方法は、多くの場合において「国」単位で時系列を追う“縦断”の流れになりがちだ。遣隋使、遣唐使などで中国大陸との国交がある時代は、日本史でも隋や唐に触れる機会があるが、それをすべての時代においてグローバルな視点で学習できる点が魅力といえる。各国を横断するような目線で見ると、例えば、唐王朝が滅亡して宋が統一を果たすころ、日本では平安時代のまっただ中という具合だ。
もちろん、そこまで「意気込んで」見る必要はなく、ある程度鑑賞しているだけでも楽しめる。先ほども書いたが、団体ごとの色分けがうまくなされているため、頭の中に変遷が図形イメージとして入りやすい。繰り返しボーッと眺めているだけで学習効果を期待できる(……ような気がするのは筆者だけだろうか)。文字情報で消化しづらい情報は「図に起こす」ことが重要だと改めて思い知らされた。
ところで、同種の「横断型」や「変遷アニメーション再生型」のソフトは意外と少なく、筆者が知る限りでは「ガイアチャンネル 〜3D地球儀で眺める世界史〜」くらいしか思い浮かばない。この手のソフトは学習に効果的であり、なかなか需要も多いと思うのだが、なぜ追随するソフトが出てこないのか不思議でならない(情報の精度を高めるには膨大な手間がかかるから、という理由もあるのだろうが……)。筆者は、「歴史地図2000」のようなソフトがもっと増えることを願ってやまない。
なお、作者もヘルプで触れているが、「歴史地図2000」で再現されている情勢は基本的に日本の資料をもとにしていることをあらかじめ注意されたい。(おそらく)他国で学ばれている歴史とは異なるだろうし、地図上の変遷が真実とは異なる可能性もある。それをふまえた上で学習に利用していただければと思う。
(田中 剛健)