タッチタイピングを効果的に学習できるソフト。タイピングの例文をユーザが自由に登録できる。入力結果をグラフ表示する機能もある。「CROQUIS」は、例文を自由に登録できるタイピング練習ソフト。見た目はシンプルながら機能が豊富で、タッチタイピングができない初心者からタイピング検定合格をを目指す上級者まで、幅広いユーザのニーズに対応する。用意されているモードは三つ。
- タッチタイプ:タッチタイピングの基礎練習を行う
- 逐次入力:入力の正確さを向上する
- 一括入力:正確さだけでなく速度も重視する総合練習
「タッチタイプ」は、ローマ字打ち専用のモードで、例文を1字ずつ入力してゆく。ウィンドウ右下にキーボード配列と打鍵する指が示されるため、タッチタイピングがまったく行えないユーザでも学習できる。「逐次入力」「一括入力」は、例文全文をまとめて入力するもので、実際の文字入力と同じ感覚で練習できる。かな漢字変換機能が利用でき、かな打ちとローマ字打ちの両方に対応する。キー配列は表示されない。テキストエディタなどで実際に文章を書くのと同じようにタイピング練習ができる、というのは、実践レッスンとしてこれ以上ないくらい最適だと思う。その上、MS-IMEやATOKといった漢字変換機能をそのまま利用できる点は非常にポイントが高い。一方、タイプミスの判定が「比較」コマンドを実行してはじめてチェックされるので、正確な入力ミス回数をカウントできないというデメリットもある。どちらを取るかは好みが分かれるところだと思うが、少なくとも筆者は「CROQUIS」の仕様を気に入っている。
各モードとも、基本的な操作方法は同じ。上記の練習モードを設定し、例文を選択してタイピングを行うだけ。「タッチタイプ」や「逐次入力」では、1字ごとに打鍵が正しいかどうかを判定する。入力したキーが間違っていた場合は入力が取り消され、再度打ち直しとなる。「一括入力」モードでは、正誤の判定を全文入力後にまとめて行う。例文の文字列をすべて入力し終わったあとに【F5】キーを押して「比較する」と、ステータスバーに結果が表示される。
「逐次入力」と「一括入力」の結果は、自動的に保存される。過去の結果は「グラフ」で閲覧でき、「入力速度(文字/分)」「誤字脱字率」「余字率」などが示される。すべての結果をまとめて見られるのはもちろん、例題別のグラフを見ることも可能。オプションで、グラフの上限/下限を変更することも可能だ。
簡易テキストエディタ機能もある。カット/コピー/ペーストといったメモ帳程度の簡単な編集が行えるほか、例文ファイル(レジスタ)を登録・編集することが可能。エディタ上で編集した文字列だけでなく、テキストファイルに含まれる文字列をまるごと例文として追加する機能を備えている。ひとつの例文ファイルに対して、複数の例文を登録しておける。
デフォルトで用意されている例文ファイルは、「キーボード基礎練習」「キーボード配列入門」「長文サンプル」の三つ。基礎練習では、1〜2単語の例文が出題される。配列入門は、ホームポジションやキーの配置を意識した問題が繰り返され、運指を効果的に学習できるよう配慮されている。「長文サンプル」はその名の通り“長めの一文”を入力するもので、より実践的な問題が用意されている。
「CROQUIS」の最大の特徴が「例文を自由に設定できること」であり、冒頭で書いた“初心者から上級者まで対応”できる理由もここにある。例えば、業務でよく使う単語を集中的に学習したければ、該当語を詰め込んだ例文ファイルを用意しておけばよいわけだし、タイピング検定の練習で使う場合は検定試験で出されるような問題をあらかじめ登録しておけばよいわけだ。
非常にシンプルな外観で、派手なインタフェースではないが、必要な機能がコンパクトに過不足なくまとまっている印象を受けた。特に、実践感覚でタイピング練習をしたいという方に強くお勧めできる。
(田中 剛健)