最大99×99までの二桁かけ算を暗記するための学習ソフト。カリキュラムは小刻みに分けられ、少しずつ学習を進めることができる。「かけ算九十九」はその名の通り、1から99までの数字を用いた“二桁かけ算”を暗記するためのソフト。九九を完全にマスターした小学生以上用として作られている。動作モードは、式と解答の丸暗記を行う「学習」、出題された問題にユーザが解答してゆく「テスト」の2種類。
「学習」モードでは、「11×16(いちいちいちろく)」「176(いちななろく)」という具合にかけ算の式と解答がよみがな付きでテンポよく順番に表示される。「テスト」モードでは、出題方法を数字順かランダムかで選択できる。「学習」モードで完璧に覚えられたと感じたら、「テスト」モードで記憶を試してみよう。正解/不正解にかかわらず、定められた設問数に到達すると結果一覧が表示される。
二桁のかけ算を覚えておくと何が便利なのか? とお考えの方も多いだろう。その効果は多岐にわたる。一番わかりやすいのは、桁数の多いかけ算が圧倒的に速くなること。例えば1,594×281という式を解く場合、二桁かけ算を使えば、
- 94×81
- 15×81(×100)
- 94×2(×100)
- 15×2(×10,000)
の四つを計算し、合計するだけで済む。ところが一桁ずつ計算した場合は、12回のかけ算と、それを足し合わせる計算が必要になる。どちらが速いかは瞭然だ。倍数をすばやく見つけたり、平方根を逆算したりするのにも使えそうだ。「ルート361はいくつ?」と聞かれて、即座に「19」と答えられたら、どんなにカッコいいだろうか……! 否、カッコいいかどうかはともかく、覚えておいて損はない。
ただし、二桁かけ算でネックとなるのが、多くのパターンを覚えなければならない点。一桁のかけ算で覚える必要があるパターンは81通りで、2×3と3×2のように、裏返るパターンを外すと全部で45通りとなる。それが二桁かけ算の場合、覚えるべき数は99×99、すなわち9,801パターン(裏返しを外しても4,950パターン)。……気が遠くなりそうなパターン数だが、ある程度目標を持って覚えていけば、なんとか達成できそうな数にも思える。
筆者としては、まず1×1から19×19までマスターすることをお勧めする。これだと、裏返しを外すと190通り覚えれば済む。九九の分と10の段を除けば、なんと126通りにまで減る。これなら、なんとか覚えられる気がしないだろうか。
「かけ算九十九」における最大のポイントは(上記のような考え方を意識してだろうか)、カリキュラムが小刻みに分かれていること。学習時の基本形は「5問区切り」となっている。例えば、11×11から11×15までを抽出して何度も繰り返し学習できるのだ(もちろん、段全体をまとめて学習/テストすることも可能)。少しずつステップアップしながら学習したい方には最適だ。1回の学習時間が比較的短いため、毎日継続して学習することも容易だろう。
学習中の段の全問と解答を印刷できる機能もある。プリンタを接続した状態で、スタート画面の「式と答を印刷する」を選択すると、A4サイズの用紙に印刷が行われる(用紙サイズの変更は行えない)。
「かけ算九十九」のシステムはよくできており、文字も大きく見やすい。暗記するために必要十分な要素が揃っており、完成度はなかなかのもの。ただ、ひとつ難点を挙げるとすれば、暗記が完了したときの「達成感」に乏しいという点だろうか。テストで全問正解しても「おめでとう」といったメッセージが表示されるわけでもなく、淡々と暗記を進めるだけなのはちょっと残念だ。ユーザの意欲をもっと上げるような仕掛けがあると、なおよいと感じた。
数学先進国のインドでは、一部の学校で二桁のかけ算を教えているところもあるそう。また、アメリカの多くの学校では「ダース」の単位を考慮に入れて、12×12までのかけ算を暗記しているそうだ。世界的に二桁暗算が主流になりそうな今だからこそ、ぜひこのソフトで“二桁かけ算マスター”を目指してほしい。
(田中 剛健)