指定時刻の星空を美しくリアルに描き上げてくれる天体シミュレーションソフト。簡便なインタフェースで、初心者でも手軽に使えるよう設計されている。「iStars3 for Windows」は、任意時刻の天体を表示するソフト。0〜7等級の約14,100個の恒星と、12等級までの星雲星団/彗星が登録されており、いわば「星座早見盤」のデジタル版といった印象。星名や星座を学ぶにはうってつけのソフトといえる。もちろん単なる「星座早見盤」にとどまらず、デジタルならではの機能が多数盛り込まれている。
メイン画面には、星がぎっしり詰め込まれた全天が表示される。全天だけでなく北天/東天/西天/南天だけを半円状で表示することも可能。光っている星にマウスポインタを合わせると、星名や星座名などが表示される。「自動書き換え」機能を使えば、分/日単位で時間を進められ、星が動く様子を見ることができる。
「日時場所設定」メニューから、日付や時刻を自由に変更することもできる。東経/北緯/高度を指定することも可能。全国主要都市の東経/北緯/高度は登録済みで、簡単に指定できる。ユーザが値を直接入力することも可能で、五つまでの値をストックしておくことができる。
「検索」機能は、星座を探す際に力を発揮する。星座の名前や星雲/星団名、惑星などの位置がいまどこなのか、すばやく検索できる。主要な星座はひと通り収録されており、星座を学ぶのに役立つ。また、「春の大曲線」や「夏の三角形」といった目安となる星を表示させることも可能。これらの星名を星座画面上に表示するか否かは、設定で切り替えられる。
双眼鏡機能も付いており、見たい星空の近くをクリックすることで拡大表示できる。見ている方向の方位角/高度、赤経/赤緯などの情報も随時、参照することが可能だ。
星図を表示する機能もある。星座線/星座境界/惑星/星名/NGCの表示、非表示を切り替えることが可能。NGC(New General Catalog)は、星団や星雲をまとめたカタログを指す。
機能はほかにもまだまだある。「iStars 用語説明」では、ソフト内に登場する専門用語が解説されている。星の知識がない初心者でも、これを読むだけである程度の知識を身につけられるだろう。「今月の見どころ」という、星に関する1ヵ月分の見どころ情報表示機能もある。また、日の出/日の入り時刻や太陽系惑星位置図を表示する機能などもあり、星にまつわるあらゆる情報が詰め込まれている。
従来の天体ソフトでは、星座の情報や精度ばかりに注力するものが多く、「星空の美しさを表現する」というアプローチのものがほとんどなかった。しかし「iStars」は、満天の星がきらきらと瞬き、まるでプラネタリウムを見ているかと思うほど美しい。自動更新にしておいてボーッと眺めているだけでも十分楽しめるものに仕上がっている。
とはいえ、星座情報も疎かにすることなく、しっかりと作り込まれている点は圧巻。さらに、バージョンアップが頻繁に行われ、新たに発見された星が次々と追加/修正されるのもうれしい限りだ。
「iStars」にはMacintosh版もリリースされている。Mac OS/Mac OS Xをお使いの方はそちらをチェックするといいだろう。
このソフトに触れ、感化された筆者は「たまには童心に帰って星空を見上げなければ!」と思わずにいられなくなった。みなさんも夕涼みついでに「iStars」を持ち出して、星座を覚えながら、ゆったりと空を眺めてみてはいかがだろうか。
(田中 剛健)