ソフト開発の動機と背景
耐震工学を専攻する私にとって、日本周辺の地震活動の様子を調べるために、地震観測資料のデータベース化を図ることはぜひとも必要なことであり、地震資料の収集と検索システムの開発に着手したのは、もうかれこれ20年以上も前のことです。それまでの大型電算機によるバッチ処理ではなく、ミニコンを個人で占有して使用できるようになって、初めて「データベースを検索する」ということができる時代になり、日本ミニコンのNOVAというミニコンで、FORTRANを使った文字だけの世界の検索システムを作りました。その後、計算機は、マイコン、パソコンと進化し、そのたびにプログラムを改編してきましたが、グラフィックが可能になり、震源分布図を描くことができるようになりました。しかし、MS-DOSの段階では、自分だけの個人的な使用に限られ、他人に使い方の説明をするというのは大変なことでした。Windowsの出現によって初めて、プログラムの説明がなくても、マウスをガチャガチャやっておれば、一応何らかの結果を得るためのプログラムが作れる時代が来て、これで一般の人にも利用していただける地震検索システムを作れることになりました。
開発に苦労した点
いまでこそ、地震が発生すると直ちに震源の位置やマグニチュードなどの地震に関する基本データが公表されますが、当時は、気象庁がほぼ1〜2年遅れで発行する地震月報に震源リストとしてまとめられていました。この中からマグニチュード4以上の地震を拾い出して、地震の発生年月日、時分、震源緯度・経度、震源深さ、マグニチュードをデータ化しました。手作業による地震データの更新は1995年ごろまで続けられましたが、ようやく、気象庁からCD-ROM化された地震カタログの発行され、また、東大地震研究所の吉井研究室のお陰で、最新の地震情報がインターネットを通して得られるようになり、地震データの追加更新が迅速に行えるようになりました。
このような専門的なソフトが受け入れられるかどうか不安でしたが、沖縄県普天間高校の永井秀行先生の目にとまり、理科(地学)の時間で使っていただけることになりました。震源深さ分布図が描けないかというお話があり、いろいろな切り口で地震の深さがどうなっているか、立体的にみればどのように見えるのかというように、視覚的に楽しめる機能を付加しました。
作者からの要望
近いうちに東海地震・南海地震のように太平洋沖合に巨大地震が発生すると考えられていますが、こういうことがわかるのも、歴史地震に関する資料や近年の地震観測資料が整備されたお陰です。「EQLIST」は、この膨大な地震資料をどうすればおもしろく見てもらえるかということも考えてあります。多くの人に、自分の住んでいる地域の地震活動の様子を知っていただき、地震に関心を持っていただきたいと思っています。
これからの予定
「EQLIST」の基本的な機能は、検索された地震の震源位置を表示することにありますが、肝心の日本地図があまり正確ではありません。これも、20年も前に子どもの学習雑誌の付録の日本全図をデジタイザで数値化したもので、拡大するとぼろが出てきます。何とかしようと思って、国土地理院の数値地図を見ているうちにできたのが、「EQLIST」と同じようにVectorにライブラリ登録している「白地図MapMap」と「白地図KenMap」です。いまでは、こちらの方を多くの方々に利用していただいておりますが、なんとか、この数値地図と「EQLIST」とを結びつけたいと思っています。
(鎌田 輝男)