これだけパソコンが普及しても「行あたり何文字詰め」という指定で原稿を要求される機会が消えたわけではないようだ。おそらく編集する側ではマス目があった方が字数・行数の計算が楽なのだろうが、だからといって原稿を渡す側がわざわざ手書きに戻すというのも癪な話だ。なかには原稿用紙風の画面に入力できる縦書きエディタなどもあるが、いつ必要になるかわからない原稿のために専用のエディタを用意して、使い方を覚えるは面倒だという人もいるだろう。そんな人にこそお勧めしたいソフトである。
レイアウト作成と印刷に機能を絞っているので、エディタやワープロはふだん使い慣れたものをそのまま使うことができるし、文字サイズや字間などの設定も、字詰めさえ決めてしまえば、あとはマス目の大きさに応じてソフトが自動的に調整してくれるという感じで、まったく気にする必要がない。
ヘッダやフッタに直接相当する機能はないが、その代わりに用紙の中央部分にタイトルなどの文字を書き込むことができるし、禁則処理部分の印刷もちゃんと原稿用紙の使い方に準拠したものだから、手書き原稿といっしょに扱っても違和感はなさそうだ。
そんなわけで、ふだんはワープロを使って文章を書いているが、たまに字詰め指定の原稿も求められるという人にとって、執筆環境そのものには手を加えなくとも原稿用紙フォーマットでの出力に対応できるという、この手軽さはなかなか魅力だろう。
ただし、用紙のレイアウトについては、もう少し柔軟性があってもいいかなと思った。プリセットされているパターンは20字×20行や16字×16行というように文字数と行数が同じだし(用紙を縦方向にした場合は行数が半分になるが)、「その他」でユーザが指定する場合も「2行増やすと自動的に2文字分増える」といった形で、文字数と行数が連動しているため、自由な設定ができないのは惜しいところだ。
レイアウトの自由度が上がれば、テキストを流し込んで印刷したい人はもちろん、純粋に「マイ原稿用紙」を作りたい手書き派の人にも、さらにアピールするのではないだろうか。
(福住 護)