1枚の静止画を素材に、その中を歩き回っている(ウォークスルー)ような動画を作成できるユニークなソフト。別の角度から見た静止画を作成することもできる。「Motion Impact」は、デジカメで撮影した写真やイラストなどの2次元の画像を3次元化する機能を持つソフト。3次元化の原理は、
- 画像内に含まれる一部(例えば写真に写された人物など)を選択して、ちょうど板に描かれた「立て看板」のようなオブジェクトとみなす
- 選択されなかった残りの部分は、舞台装置でいわれる「書き割り」に相当する「背景」となる
- 選択した部分を手前側、残りを奥側に配置する
ことで立体化するというもの。奥行きの異なる2個の物体があるときには、見る角度で両者の位置関係が異なる。また、どんどんと視点を近づけていき、手前側にあるオブジェクトよりもさらに前方に進めば、手前側のオブジェクトは見えなくなる──「Motion Impact」では、これをソフトウェアで実現することで、もともと平面だった画像から3次元空間を作り上げることを可能にしている。
操作の概要は次のようになる。まず、素材となる画像(オリジナル画像)から2枚の画像を作る。1枚は全体の「背景」となる画像。オリジナル画像から立体化させたい部分(つまり手前側に配置される部分)を消し去り、抜けた部分を他の背景と自然につながるように埋めるためのもの。もう1枚は「マスク画像」で、立体化させたい部分だけを白抜きにし、他の部分をすべて黒としたものだ。
次に、オリジナル画像と作成した2枚の画像を「Motion Impact」で読み込む。オリジナル画像が表示されるので、ここで「消失点」を設定する。さらに、画像内で立体化(手前にくる)したい範囲(リージョン)を指定する。基本的には、先に作成したマスク画像で白抜きにされた部分を選択することになる。
あとは、3次元空間内で「視点(カメラの位置)をどこに配置するか」「どの方向を見るか」「視野角はどの程度か」といったパラメータを指定する。ユーザの指定したパラメータに応じて、リージョンの表示位置や拡大・縮小率が変化し、カメラが動き回った際の画像がシミュレートされる。
作成したデータは、AVI形式の動画ファイルに出力できるほか、BMP形式の静止画ファイルに出力することが可能。複数のキーフレームを指定してキーフレームの順にカメラが移動するという、動き(モーション)のある動画を作成することもできる。キーフレームは最大99個まで設定できる。また、QuickDraw 3Dで使われる3次元データ(3DMF)形式で出力することも可能だ。
実際に3D画像を得るにはレンダリングを行う。このときQuickDraw 3Dを用いれば、カメラ位置やアングルの変化をすぐに確認できるリアルタイムレンダリングを利用することが可能。良好な画質でレンダリングするには、オリジナル画像の解像度をできるだけ高くしておけばよい。
Windows版のほかに、Macintosh版もある。
※消失点:遠近法で、画面内のどの部分が「無限遠点」になるかという点のこと